本部・事務局から

最新の記事

アーカイブ

社会政策学会特別プロジェクト「東日本大震災と社会政策」の提案

 

2012年8月2日

2012.5.26
社会政策学会幹事会

1.特別プロジェクト発起の趣旨

東日本大震災は、自然災害としての規模や被害の深刻さに加え、原子力発電所事故やその後の政策対応など人災の様相を伴い複合災害化したという点で、現代社会の災害史に特筆される出来事となった。高齢化が進み、産業・雇用基盤の脆弱な東北・東日本の沿岸部を主たる被災地とする巨大災害であることから、復興の長期化、社会活力そのものの縮小、そのもとでの社会的格差や分断の深刻化などが予測される。

大災害からの復興プロセスには、人の生きる力や生活への主導権の再獲得を支える社会政策が組み込まれなければならず、そのためには、直接的な生活・生業保障と一体となった自律的なコミュニティ再生や地域の将来選択への条件づくりが復興の基本に据えられなければならない。そうした観点から、復興過程を検証し、学術的に分析・記録するとともに、被災者・被災地の創造的再生に向け科学的な支援を行っていくことが求められている。そこで、社会政策学会の多様な専門知見を広く集め、国際的にも通用力ある震災復興に関する社会政策の理論蓄積とその公開、ならびに公論形成に努めることとする。

すでに学会幹事会は、第123回大会において東日本大震災に係るテーマ別分科会を開催し、その成果をもとに第124回大会に震災・原発災害関連の共通論題を設定している。この特別プロジェクトは、そうした学会の取り組みの成果を継承するものであることから、これらの企画に関わった学会員が中心となって発起するものである。

2.社会政策学会特別プロジェクトの特徴

東日本大震災への人文・社会系学術団体による系統的な対応としては、すでに、日本心理学諸学会連合、日本社会福祉系学会連合などの学協会連合や、その構成学術団体、友好組織などによる多彩なシンポジウム開催や現地支援、支援指針の構築などがあるほか、東日本大震災リハビリテーション支援関連10団体など職能組織と学術組織の連携による支援など、それぞれの組織的ストレングスを発揮した取り組みが進められてきている。

この特別プロジェクトは、そうした臨床分野からの支援の動きを見据えつつ、地域と暮らしの創造的復興に寄与する包括的な社会政策をデザインするという枠組みから、分析、評価、提言に取り組むこととする。

3.プロジェクトの活動内容

(1)活動方針

・東日本大震災からの創造的復興に役立つ社会政策研究からの学術情報構築ならびに政策提言を行う。
・被災・復興を学術的に分析・検証し、記録化する。

(2)活動内容

・被災・復興に関わる社会政策問題の分析、課題提示、提言、推進すべき事例の検証などに関する論文、レポート、ブログを公開する。
・社会政策上、注目すべき論文、レポート、コメントなどの紹介を行う。
・大会時にテーマ別分科会を設ける。また、災害と社会政策をテーマとするシンポジウムなどを企画する。
・大学・研究機関、学術組織、自治体、民間団体、住民組織などと情報交流や必要な協力を行う。

(3)取り上げるテーマの範囲

・東日本大震災の被災実態・復興過程に関するもの
・福島原子力発電所事故の被災実態・経過に関するもの
・阪神淡路大震災など国内の大規模災害との比較に関するもの
・ハリケーン・カトリーナ災害などグローバルな大規模災害との比較に関するもの
・地域の復興や創造的再生に係る産業・社会システム構築や「新しい公共」形成に関するもの
・災害・緊急事態等の非日常的事態への社会政策領域からの対応に関するもの

(4)メディア

・学会誌『社会政策』
・学会HP上のプロジェクト・サイト

4.運営体制

・発起人が中心となりプロジェクト・メンバーとなる会員を募る。オープンでゆるやかな参加を基本とする。
・プロジェクト・メンバーによる運営会議を置く。プロジェクトの方針決定ならびに実施運営方針は運営会議の合議とする。
・運営会議にプロジェクト代表者としての座長を置く。
・活動の必要性に応じ、学会外の行政、諸団体や地域組織、民間活動体などとの渉外連携を行う担当者を置く。
・投稿的参加を広く呼びかける。
・期間は、東日本大震災発災から3年までの復興期間を重視するという意味で、プロジェクト発足から2年間の時限とし、その後、活動の成果と継続の必要性を点検しながら学会規約に基づく専門部会への展開を考慮する。
・学会として予算措置をとる。
・幹事会ならびに各種委員会と緊密に調整・連携しながら進める。
以上

現在、この特別プロジェクトのメンバーを公募しております。ご関心のある方は、次の連絡先にお問合わせ下さい。

【連絡先】特別プロジェクト暫定座長・布川日佐史(静岡大学)
  e-mail: jehfuka[at]ipc.shizuoka.ac.jp