第28期幹事会代表幹事
玉井 金五
第28期幹事会の活動を振り返って
学会ホームページ上に、以前代表幹事を務められた伊藤セツ会員の小文に続いて二村一夫会員の寄稿文も掲載されました。これらを拝読いたしますと、学会改革がいつ頃から始められ、またそのなかでどのような課題と格闘してきたのかが実によくわかります。伊藤会員は改革の歴史をキッチリ記録しておくべきであるといっておられますし、また二村会員からは本部が始めて関東から外に出たということで、このさいぜひ寄稿をと勧められましたので、思い切って小論を執筆させていただきました。
これまでの改革のなかで、私にとって一番インパクトがあったのは、何といっても二村代表時代の学会ニューズレターの刊行でした。正直申しまして学会がどのような形で運営されているのか、また実際テーマ等を決めるにあたっていかなる議論がなされているのか、このときまで外からは全く見えませんでした。とくに、大会によっては企画自体が十分練られていないと思うことがあり、このようなことを続けていればいずれ行き詰まると思ったことも何度かありました。そうしたところに現れたのが、先のニューズレターでした。
それぞれの時代の改革については、かつて代表を務められた高田会員をはじめとして今後も引き続き執筆してくださることと存じます。そこで、以下では大阪市立大学に本部が移ってからのことを中心に書いてみたいと思います。先に武川新代表が所信を表明されていますが、私自身も2年間でできるものはおそらく3つぐらいしかないであろうと考えました。いつも必要なときに幹事が集まって協議、実行するわけにはまいりませんので、そうした学会組織の特質といったものを押えて課題に取り組むことが求められたわけです。
第1は、若い研究者に数多く入会していただき、学会それ自体に新しい感覚、エネルギーを注入していかなければいけないということでした。それは、私が引き継ぐまえから意識され実行されていたことで、それをより加速させるのが我々の任務であったわけです。一方で、会員数が余りにも増えることに対する警戒の声があるのは承知していますが、会員数が減り、学会の士気が低下することに比べれば、若い会員の増加は大いに歓迎すべきことでしょう。そして、入会だけでなく、積極的に学会報告をしていただくのは勿論のこと、各種委員会、部会にも委員としてできるだけ入っていただき、実際の運営にもかかわっていただけるように配慮したつもりです。
第2は、秋の大会を春の大会にすこしでも近づけるということでした。当学会は春がメインで、秋は必ずしもそうでない雰囲気がありました。しかし、上井代表時代に企画委員会が発足し、春と秋のテーマについて議論を重ねた結果、時宜的にみてタイムリーなテーマを選んだり、また連続性といった面にも注意を払うことによって実に連携がとれるようになりました。企画が優れていれば、大会参加者数が増えるのは当然です。大会参加費を取るようにしましたから、余計に企画力ならびにその中身のある実践が問われるようになったわけです。参加者数だけで判断するのは危険ですが、明らかに秋の参加者数は伸びてきており、大会によっては春と規模がほとんど変わらないものまで出るようになりました。
第3は、国際交流の推進です。これほど国際化が進んでいるのに、これまで当学会は外国人研究者がゲストスピーカーとして参加することが極めて少なかったと思います。これも国際交流委員会が発足したおかげで、この2年間外国人研究者の参加、報告の機会が飛躍的に増えました。一方で、日本で勤務している外国人研究者や留学している院生の入会も目立つようになり、あるときの分科会は半数以上が外国人研究者や留学生で占められるということも生じました。これまで、当学会は歴史と伝統があるにもかかわらず海外への発信力が強くなかったということが言われます。外国人研究者との交流の深化は、日本の社会政策を国際的に発信する絶好のチャンスなのです。
以上の3点を意識して第28期を担当してまいりました。これらのことは、10年以上にわたる学会改革の土台のうえで可能になったことで、その意味でも改革とは非常に時間がかかること、しかもその趣旨に賛同するものが粘り強く引き継いでいかなければ実現しないことを痛感しています。本部が東京を離れたということで、いろいろと厄介なことが生じるという不安で一杯でしたが、まずは幹事会メンバーや編集をはじめとする各種委員会の方々、専門や地域の各部会の担当者に救われました。皆さん、本当によくサポートしてくださいました。また、森前代表の適切なアドバイス、ホームページ担当の二村会員のご尽力、学会事務センターの強力な支援など数え上げれば切りがありません。
しかし、それ以上に全国の学会員の皆様が一番暖かく見守ってくださったというべきかもしれません。正直申しまして、予想していた以上に気持ちよく担当させていただき、感謝している次第です。第28期が無事に終了いたしましたのも、当学会のすばらしいチームワークと風通しの良さに尽きるのではないかと思います。
〔2006年7月3日寄稿〕