『社会政策学会年報』第18集 学会記事
この第一八集から、社会政策学会年報が、会長に配布されるわけであるが、これを機に学会記事の欄を復活させることにした。とりあえず、昭和四七、四八両年度を中心に記事をとりまとめた。なお、昭和三六年度までの活動は、第一〇集までの学会年報に掲載されており、また別に第三〇号まで発行されていた「社会政策学会報」が、昭和四二年度までの活動を報告している。 (労研・下山編記)
◇第四四回大会(福島大学担当、七二年六月二日・三日開催)
〈自由論題〉
I 現代年金学原理 千葉商科大学 松本浩太郎
II 退職金制度の現状と問題点 大阪女子大学 黒住 章
III 年金の自動的調整――北欧の例を中心として―― 社会保障研究所 平石長久
〈共通課題〉「現代の青年労働者問題」
I 社会変動と労働者像 法政大学 岡本秀昭
II 青年労働者・〈労働観〉とその背景 甲南大学 熊沢 誠
III 青年労働者の労務管理について 中央大学 長谷川 広
IV 労働組合と青年労働者 明治学院大学 竹内真一
V 資本蓄積と青年労働者問題 立命館大学 戸木田嘉久
〈総括討論〉
座長 法政大学 高木督夫
この大会では、高令労働者の問題に関連する自由論題報告三題と、経済学・経営学・社会学の各方面からする青年労働者問題についての共通論題報告五題がなされたわけである。総括討論は、熊沢報告をめぐって対立する論点がだされるなど、熱心かつさかんに行なわれた。なお、大会場、宿泊施設、懇談会を同一場所(飯坂温泉「あづま荘」)で行なうという初めての試みがなされ、吾妻スカイラインから磐梯猪苗代へとぬける大会後のバス旅行とあわせ、好評であった。また、この大会を機に、学会本部の中央大学から労働科学研究所への交代があった関係で、規約第一条の「本会の事務所は東京都におく」が、「本会の事務所は総会の定めるところによる」と改正された。
◇第四五回研究大会(関西部会大阪大学担当、七二年一一月一日・二日開催)
〈自由論題〉
鉄鋼「合理化」の進展と企業内教育――労使関係の「安定化」および労働過程変革との関連について―― 北海道大学 道又健治郎
第一分科会
〈論題〉「医療サービスと医療保険」
I 医療保険と医療サービス 国立公衆衛生院 前田信雄 討論者 横浜市立大学 小山路男
II 医療制度改革――誰がそれを? ―― 大阪大学 関 悌四郎 討論者 早稲田大学 佐口 卓
III 医療保障における保険とサービス 日本女子大学 松尾 均 討論者 法政大学 吉田秀夫
〈総括討論〉
座長・大阪市立大学 小川喜一
第二分科会
〈論題〉「現代ホワイトカラー論」
I 技術者の階級的性格について 鹿児島大学 仲村政文 討論者 追手門学院大学 浮田幸男
II ホワイトカラーと労働組合 大阪府立大学 長尾周也 討論者 慶応義塾大学 黒川俊雄
III 職員層の階層分化 法政大学 田沼 肇 討論者 立命館大学 三好正巳
〈総括討論〉
座長 関西学院大学 大前朔郎
〈共通論題〉「現代労資関係の諸問題」
I 団体交渉と実質賃金 大阪大学 片山邦雄 討論者 名古屋大学 小池和男
II 現代企業と労使関係――拡大する企業活動と労働組合―― 京都大学 赤岡 功 討論者 大阪府立大学 森田 劭
III 労使協議制と「経営参画」 明治大学 木元進一郎 討論者 関西労働教育文化研究所 音田正巳
IV 山猫ストライキの現代的問題状況 東京大学 戸塚秀夫 討論者 岡山大学 菊地光造
V 労使関係の法的規制と団体交渉機構 明治大学 栗田 健 討論者 京都大学 片岡 昇
〈総括討論〉
座長 京都大学 前川嘉一・立命館大学 藤原壮介
第一日に自由論題と二つの分科会の報告と討論が、第二日に共通論題の報告と討論がなされたのであるが、両日とも多数の討論者がたち、多彩で充実した内容の研究大会であった。懇親会は第一日の夜に、東洋ホテルで行なわれた。
◇第四六回大会(北海道大学担当、七三年六月一七日・一八日開催)
〈自由論題〉
I 右翼組合路線の破綻と克服の一過程――全日本海員組合の事例において―― 海上労働科学研究所 篠原陽一
II 路面輸送労働の諸問題 亜細亜大学 野沢 浩
III 社会政策と国際社会 北海道大学 新川士郎
〈共通論題〉「資本輸出と労働問題」
I 在日外銀の労働問題 銀行労働研究会 泉谷 甫・及川 徹
II 入植植民地における原住民賃労働の諸問題 福島大学 伊部正之
III 日本資本のタイヘの進出とその問題点 法政大学 萩原 進
IV 六〇年代後半以降の日本資本の東南アジアヘの進出と労働問題 都立大学 小林英夫
V 多国籍企業の支配構造と労働問題 大阪市立大学 佐々木 建
〈総括討論〉
座長 法政大学 舟橋尚道
一九五四年、六四年につづく第三回目の北海道大会であった。共通論題は、前年の秋に全員に対して行なったアンケート調査をもとに、幹事会がたてた五つのテーマ(一、産業再配置と労働問題・過密過疎と地域労働問題、二、現段階の労働組合運動の諸問題、三、国際化時代の社会政策・世界経済と労働問題、四、老人問題・高令労働問題、五、帰人労働問題)のうちの一つを古典的概念に依りつつしぼるという形で設定されたものである。報告者の半分が、新入会員であることもあって、問題への新らしい切り込みがなされ、有益な大会であった。
今大会の総会では、研究大会、推薦幹事などに関連して、規約を現状にあわせて改訂した。また学会年報を会員配布とするために会費値上げを行なうことなどもきめられた。
大会開催とあわせ、サッポロビール園での懇親会(一七日)、アイヌ問題での懇話会(一八日)、北海道開拓記念記念館・石狩新港・小樽多喜二碑などの見学(一九日)が、北海道部会会員の尽力のもとに行なわれ、全国から参集した会員の胸に忘れがたい印象が残されたのである。
◇第四七回研究大会(中国四国部会岡山大学担当、七三年一一月一七日・一八日開催)
〈共通論題〉「現代の労働者福祉」
I 企業内福祉と労働組合 立命館大学 藤原壮介
II 労働災害と労働者福祉 国立国会図書館 河越重任
III 住宅問題と労働者福祉 北海道教育大学 関谷嵐子
IV 中小企業問題と労働者福祉 同志社大学 松村 彰
V 高令労働者問題と労働者福祉 岡山大学 向井喜典
VI 最近の労働福祉関係の諸立法の動向と問題点 日本女子大学 佐藤 進
〈総括討論〉
同志社大学 西村豁通・香川大学 木村正身
近年「福祉」の問題がさまざまの立場・方面で、さかんにとりあげられ論議されるようになり、本学会でも西村豁通会員を中心にして、一九七二年に福祉問題分科会が設けられるに至ったのであるが、大会テーマとしてとりあげられたのはこの岡山大会が最初であり、この意味で注目すべき研究大会である。第一日目の午後に三題の報告があり、その日の夕刻岡山ロイヤルホテルでの懇親会で会員相互の親睦が深められた。そして翌一八日の報告と総括討論、さらに一九日の岡山県南水島コンビナートを中心とする見学旅行と豊富で有意義な日程が進められたのである。
◇第四八回大会(日本大学担当、七四年五月一八日・一九日開催)
〈共通論題〉「高令者問題」
I オックスフォード市周辺における老人福祉とその源流 明星大学 三好豊太郎
II 高令者福祉事業の現状と問題点 立命館大学 遠藤 滋
III 「老令者」雇用の現状――雇用の性格をめぐって―― 国民生活センター調査研究部 山崎 清
IV 高令者の雇用保障要求について 日本福祉大学 大木一訓
V 五万円年金の残された課題 大阪市立大学 坂口正之
VI フランスにおける老令保障の当面の諸問題 名古屋市立大学 上村政彦
VII 老後保障運動の現状と課題 法政大学 吉田秀夫
〈総括討論〉
座長 立命館大学 坂寄俊雄
〈自由論題〉イギリスにおける最近の労使関係――炭鉱ストライキを中心として―― 日本大学 牧野富夫
分科会 「春闘体制の総括と展望」
I 春闘体制の総括と展望 信州大学 高梨 昌
II 春闘の意義と展望 法政大学 舟橋尚道
(討論) 座長 東京大学 氏原正治郎
分科会 「労働者福祉の諸問題」
I フランスにおける経営委員会の「社会的活動」 慶応大学 黒川俊雄
II わが国労働運動と労働者福祉の課題 同志社大学 西村豁通
(討論) 座長 明治大学 笠原長寿
分科会 「社会保障と雇用保険法案」
I 「失業保障」から「就職促進」へ――雇用保険法案の問題点―― 国立国会図書館 河趣重任
II 積極的雇用政策としての「雇用保険法案」の意義 法政大学 小林謙一
(討論) 座長 早稲田大学 佐口 卓
第一日は、八丁堀の東京都勤労福祉会館で共通論題の全報告、総会、懇親会が行なわれた。第二日は、水道橋の日本大学経済学部に於いて、共通論題の総括討論、自由論題、さらに三グループにわかれての分科会という形で行なわれた。共通論題のテーマはもちろん、各分科会のテーマもいわば時の問題であり、多数の傍聴者もあって、盛況裡に行なわれた大会であった。
◇生活問題・社会保障合同分科会
ほぼ毎月行なわれている例会の内容を、四四回大会から四八回大会に至る期間について紹介しておく。なお、以下で敬称のあるのは報告者として非会員の方にお願いした例会である。
I 社会保障の法体系化について 日本女子大学 佐藤 進(七二年七月一日・上智大)
II 西ドイツの年金制の動向 健保連 石本忠義(七二年七月二二日・上智会館)
III 掛川老令者世帯について 社会保障研 小沼 正・教育大 森岡清美氏(七二年八月二六日・健保会館)
IV 老人ホームにおける生活費 上智大 籠山 京(七二年九月三〇日・上智大)
V 国際社会保障会議の報告――ソシアル・ポリシーをめぐって―― 日本社会事業大 仲村優一(七二年一〇月二八日・上智大)
VI 高令労働者生活の階層性 国民生活センター 山崎 清(七二年一二月九日・上智大)
VII スェーデンの七クローネ政策 早稲田大学 佐口 卓(七三年一月二七日・上智大)
VIII 在イギリス雑感――労働運動・社会保障その他―― 東京大学 氏原正治郎(七三年二月一七日・光生館)
IX 最近における労働者の生活時間 労研 藤本 武(七三年三月一七日・上智大)
X スェーデンの年金制度について 千葉商科大 松本浩太郎(七三年四月二一日・上智大)
XI 交通事故の被害者に関する調査 明治学院大 三和 治(七三年五月二六日・上智大)
XII 独身中高年婦人の老後生活 東京都民生局 岩田殉成氏(七三年七月二一日・健保会館)
XIII 労働と人口問題 ILO東京支局 高橋 武(七三年八月二五日・光生館)
XIV アメリカにおける貧乏研究 慶応大 中鉢正美(七三年九月二九日・上智大)
XV 世帯主こづかい調査について 国民生活センター 橋本 宏氏(七三年一〇月二七日・上智大)
XVI 通勤途上災害の補償について 労働省労災管理課 新村浩一郎氏(七三年一二月八日・上智大)
XVII 船員保険の現状と問題点 社会保険庁船員保険課 相沢行雄氏(七四年一月二六日・上智大)
XVIII 老令所得層の家庭調査報告 中央大 江口英一・上智大 松崎久米太郎氏(七四年二月九日・上智会館)
XIX 雇用保険法案について 信州大 高梨 昌(七四年三月一六日・上智大)
XX フランスの診療報酬制度について 横浜市大 小山路男(七四年四月二〇日・上智大)
◇北海道部会
当該期間に、北海道部会の開催によるつぎの研究会があった。
一九七二年六月三〇日 於北大
論題 「日本における公企業の労使関係」
報告者 古武清彦(小樽商大)
一九七二年九月八日 於北大
論題 「下山房雄氏の賃金理論」
報告者 平石 修(札幌短大)
一九七二年一〇月一一日 於北大
論題 「北海道における労働者階級の内部構成変化」
報告者 中川勝雄(道綜経研)
一九七三年四月二一日 於北大
論題 「階級階層研究の課題と方法」
報告者 水野一宇(道綜経研)
なお、一九七三年六月には学会全国大会が北大を会場に札幌で開催され、これの準備・運営に、部会をあげてのとりくみがなされた。
(北大・荒又記)
◇関東部会
一九七三年四月一四日(土)午後より五時まで東京大学経済学部第四会議室にて、左記要領で、第三〇回関東部会を開催した。出席者は、非会員を含めて二五名であった。
論題 「公共部門の労使関係」
報告者 神川和欣(横浜国立大学) 竹下英男(早稲田大学)
座長 高梨 昌(信州大学)
なお、大会終了後左記の通り、社会政策学会関東部会の内規変更についての申し合わせを行なった。
社会政策学会関東部会の内規変更についての申し合わせ
一九七三年四月一四日
一九七三年二月一七日の幹事会において、現在の関東部会幹事会選挙内規(一九五九年一月三一日第一四回関東部会決定)および幹事会による運営は、現状にそくしてはないので、内規を改めたいとの提案があり、現幹事選挙内規および幹事会を廃止して次の新内規を決定した。
一、 幹事を一名とする。
二、 幹事の任期を二年とする。
三、 幹事は少なくとも年一回関東部会を開催する。
四、 幹事を補佐するため相談役若干名をおくことができる。
五、 相談役は、幹事が指名する。
六、 現幹事は次期幹事を指名する。
一九七四年四月六日午後一時三〇分より四時まで左記の要領で第三一回関東部会例会を開催した。出席者三〇名であった。
論題 「春闘の理論と論理」
報告者 隅谷三喜男(東京大学)
コメンテイター 佐野陽子(慶応大学)
座長 栗田 健(明治大学)
(東大・氏原記)
◇関西部会・福祉問題分科会
第三四回 関西部会 参加者 二一名
とき 一九七二年六月一七日(土)午後二時より
ところ 同志社大学会館三〇四号室
報告 一、「賃労働の理論」 大阪市大(院) 坂口正之
二、「土地問題と土地政策」 近畿大 山嵜義三郎
議決 大学院修士課程在籍者を関西部会準会員として参加を認める
第三五回 関西部会・第一回福祉問題分科会 参加者 三五名
とき 一九七二年九月三〇日(土)午前一〇時より
ところ 同志祉大学会館 三〇五号室
報告 一、「低所得層の消費構造と生計費」 大阪経大 土井乙平
二、「シビル・ミニマム論の諸問題」 同志社大 小倉襄二
三、「ウェッブのナショナル・ミニマム政策」 関学大 大前朔郎
四、「シビル・ミニマムとナシヨナルミニマム――農村生活を中心に――」大阪社大 庄谷怜子
総括討論 座長 竜谷大 孝橋正一
第二回 福祉問題分科会 参加者 一一名
とき 一九七二年一二月二日(土)午後一時より
ところ 同志社大学会館三〇四号室報吉
報告 一、「最近の労働政策にみられる福祉問題について」 同志社大 三塚武男
二、「七〇年代の福祉政策」日本福祉大 高島 進
第三六回関西部会・第三回福祉問題分科会 参加者 二一名
とき 一九七四年五月四日(土)午後一時半より
ところ 関西学院大学池内記念館会議室
報告 一、「中小企業における婦人労働者の賃金および労働諸条件――西宮市における実態調査を中心に――」 関学大 安保則夫
二、「婦人労働と現代の貧困――主婦の賃労働者化について――」 八代学院大 金持伸子
(同志社大・西村記)
◇中国・四国部会
中・四国部会は、発足いらい六年になる。一九六八年秋の愛媛大学での学会第三八回研究大会の開催が、その契機であった。会員は現在一八名で、毎年一回、夏に一泊二日で研究例会を開いて今日に至っている。
昭和四四年度の研究例会は、八月八日(火)、九日(水)松山市道後の鷺泉荘で開かれた。初日は、伊達功氏(松山商大)の報告「社会政策的見地からみたユートピア」、合田千里氏(特別参加、新居浜地評)の報告「公害と公害理論」、があり、第二日目は「最近の社会政策論の動向」を共通論題に、松井栄一氏(高知大)、望月清人氏(松山商大)、向井喜典氏(岡山大)、による問題提起がおこなわれた。研究例会の二日目を、シンポジウム形式で運営することは、前年夏の商知市での研究例会いらいはじめたところであり、瀬戸内周辺に住む会員相互にとって、共通の関心の集点にある問題をとり上げて、研究活動の緊密な交流と促進を図ろうとするものである。前年夏の研究例会では、このような視点から「公害」問題の研究がとり上げられた。
翌四八年度の研究例会は、七月三一日(火)、八月一日(水)、岡山大学法文学部で開かれた。研究報告は、小林漢二氏(愛媛大)の「日本歴史学派の方法論争」、星島一夫氏(愛媛大)の「労働者の賃金意識」、であった。この年は、中・四国部会の主催で同年秋に岡山大学を会場として学会第四七回研究大会が開かれる年でもあり、その準備のための協議事項などが多かったため、研究例会二日目のシンポジウム形式はとりやめた。第四七回研究大会は、「現代の労働者福祉」を共通論題に、一一月一七日(土)、一八日(日)、岡山大学法文学部で開くこと、共通論題の総括討論座長および報告者に中・四国部会として誰に出てもらうか、などをとり決めた。
学会第四七回研究大会は、別記のような内容で開かれたが、なされた報告と討論は、研究史の現時点に比較的新しい「労働者福祉」問題の研究の課題と展望に、重要な礎石を築かせるものであった。この研究大会の企画に多大のご協力をいただいた西村豁通氏をはじめとする福祉分科会の方々、また報告者、参加者の方々に、中・四国部会として厚く御礼を申し上げておきたい。
なお、一九七四年の研究例会は、七月末に香川大学で開かれる予定である。部会事務局は、現在、星島一夫、小林漢二、両氏によって運営されている。
(岡山大・向井記)
◇九州部会
一九七二、七三年度の部会は次の通り開催した。
一九七二年五月六日 仲村政文「精神労働の性格について――社会政策論との関連」
同年九月九日 湖尻賢一「中小企業『近代化』政策の現況――小零細経営の労働問題に関連して」 坂脇昭吉「新大隅開発計画をめぐる諸問題」
同年一二月九日 清山卓郎「わが国失業問題の現段階的特質と失業・半失業諸形態」
一九七三年二月一〇日 藤島洋一「労働力市場価値論の問題点――同一労働同一賃金の要求原則をめぐって」
同年五月一二日 大里仁士「石炭・エネルギー問題への視角」
同年九月二二日 大坂巳年子「婦人労働の現状と問題点――実態調査からみた女子大生の職業意識」坂脇昭古「国家論とエンゲルス――現代社会政策論への接近」
同年一二月二日 正田誠一「現代社会政策の課題――国家独占資本主義の再生産機構蓄積機構と労働・社会政策」
一九七四年二月九日 蔦川正義「石炭産業の分解と産炭地域の変貌――筑豊を中心とする資料整理」古賀良一「マルクスにおける労働組合運動の理解」
(八幡大・清山記)
◇労働組合分科会
昭和四七年度以降の研究会の開催状況は以下の通りである。なお労働組合分科会の当番校が専修大に移ったのは、昭和四三年度からであったが、それから数えて、以下の研究は、第一六〜二一回にあたる。
黒川俊雄「フランス労働運動の現状」七二年六月一七日・中央大学会館にて開催。
山田高生「一八九二年プロイセン鉱山法改正と任意性労働者委員会」七ニ年一一月一八日・神田学士会館にて開催。
飯田 鼎「第一次世界大戦とイギリス労働運動」七三年二月一〇日、市ケ谷、メジカルフレンド社にて開催。
富永賢次「鉄鋼産業における関連労働者の現状と組織状況」七三年六月六日 市ケ谷私学会館にて開催。
大野喜美「港湾労働における不安定雇用」七三年一〇月二〇日 市ケ谷、メジカルフレンド社にて開催。
川辺平八郎「航空産業の労働問題――いわゆる日航〔マル生〕を中心として−−」七四年四月二〇日、神田専修大学にて開催
(専大・加藤記)
◇社会政策学会の歴史と現状
――経済学会連合ニュース・第七号(七三年一〇月)加盟学会紹介より――
明治二九年創立の「社会政策学会」は、社会改良主義をその主たるイデオロギー基盤とした総合的な経済学であったが、大正末年以降その活動を停止したまま第二次大戦後に至った。現在の社会政策学会は、この旧社会政策学会から名称財産をひきつぎ、かつ旧学会理事を名誉会長とするなどの継承関係をもつが、内容的には全く新しい学会として昭和二五年に発足したものである。すなわち、昭和二四年の春以降展開されたいわゆる社会政策本質論争を通じる全国の研究者相互の連絡と理解の深まりを背景として「旧社会政策学会のイデオロギーやその基盤とは異なる条件の上に、社会科学の一分科としての社会政策学のための学会」(社会政策学会年報第一集二八七ページ)として、一〇五名の会員(第一回大会当時)で出発したのである。本年六月の第四六回大会の時点で学会の会員数は六一〇名となり、社会政策・労働経済・労働問題関連の研究者の組織として、活発な研究活動を行ないつつ発展しているのが現状である。
現在の学会の活動としては、春に本部(事務局)主催で大会を、秋に地方部会主催で研究大会を開くほか、五つの地方部会(関東・関西・北海道・中国・四国・九州)と四つの分科会(労働組合、生活問題、社会保障、福祉問題)が行なっている研究会がある。ほかに年報の発行、会員の研究テーマのリストの作成なども行なっている。
創立の後、現在に至る二三年間の活動の報告にかえて、以下に大会の共通論題および年報の特集テーマを掲げておく。
〔大会・共通論題〕
一、―(一九五〇年七月、慶応大・東大)
二、―(五〇年一一月、京大・同志社大).
三、失業・労働時間・労働組合(五一年六月、中央大・一橋大)
四、―(五一年一一月、立命館大)
五、―(五二年六月、横浜市大・法政大)
六、―(五二年一〇、一一月、神戸大)
七、 日本の賃労働における封建性(五三年六月、早大・立教大)
八、 産業合理化と労働問題(五三年一〇月、東北大)
九、 過剰人口と労働問題(五四年七月、北大)
一〇、労働組合の経営参加(五四年一一月、関西学院大)
一一、国民生活の窮乏化と社会政策(五五年五月、明大)
一二、わが国戦後一〇年の労働組合(五五年一一月、関西大)
一三、賃金(五六年四月、日大)
一四、失業(五六年一〇月、九州大・西南学院大)
一五、生産性向上と社会政策(五七年四月、都立大)
一六、退職金・年金(五七年一一月、大阪市大)
一七、社会政策の研究方法(五八年五月、東大)
一八、中小企業の労働問題(五八年一〇、一一月、同志社大)
一九、婦人労働(五九年五月、専修大)
二〇、賃金構造(五九年一一月、京大)
二一、労働市場(六〇年四月、東経大)
二二、労働運動史(六〇年一〇月、立命館大)
二三、技術革新と労働問題(六一年六月、明大)
二四、第二組合(六一年一一月、長崎大)
二五、労務管理と社会政策(六二年五月、慶応大)
二六、低所得労働者の諸問題(六二年一一月、名大)
二七、労働時間(六三年五月、早大)
二八、経済成長と賃金(六三年一一月、神戸大)
二九、地域経済と労働問題(六四年七月、北大)
三〇、社会政策の国際比較(六四年一一月、関西学院大)
三一、社会保障論(六五年五月・法政大)
三二、労使関係の国際比較(六五年一一月、関西大)
三三、現段階合理化の特質(六六年五月、日本社会事業大)
三四、わが国戦後二〇年の労働運動(六六年一〇月、大阪経済大)
三五、労働経済と社会政策(六七年五月、都立大)
三六、現代日本の階級構成と労働問題(六七年一〇月、神戸商科大)
三七、合理化と労働災害(六八年五月、明治学院大)
三八、労働力不足(六八年一〇月、愛媛大)
三九、生活構造変化と労働者状態(六九年五月、早大)
四〇、社会保障の構想と現実(六九年一一月、日本福祉大)
四一、戦後日本社会政策の基本性格(七〇年一二月、上智大)
四二、七〇年代の労働者状態と労働運動(七一年五月、関西学院大)
四三、都市問題と社会政策(七一年一一月、八幡大学)
四四、現代の青年労働者問題(七二年六月、福島大)
四五、現代労使関係の諸問題(七二年一一月、阪大)
四六、資本輸出と労働問題(七三年六月、北大)
四七、現代の労働者福祉(七三年一一月、岡山大)
四八、高令者問題(七四年五月、日大)
四九、産業再配置と労働者・農民問題(七四年一〇月、鹿児島大)
(年報特集テーマ)
一、賃金・生計費・生活保障(一九五三年一二月)
二、賃労働における封建性(五五年六月)
三、産業合理化と労働問題(五六年六月)
四、職後日本の労働組合(五六年一〇月)
五、最低賃金制(五七年七月)
六、生産性向上と社会政策(五八年一〇月)
七、日本の失業(五九年一〇月)
八、中小企業と労働問題(六〇年一〇月)
九、婦人労働(六一年五月)
一〇、労働市場と賃金(六一年一二月)
一一、労働時間と職務給(六四年一月)
一二、経済成長と賃金(六四年一一月)
一三、社会保障と最低賃金制(六六年三月)
一四、合理化と労働者階級(六七年六月)
一五、戦後労働運動の展開過程(六八年四月)
一六、社会政策と労働経済学(七一年一一月)
一七、七〇年代の労働者状態(七二年一〇月)
一八、労働戦線の統一(七四年一〇月)
一九、資本輸出と労働問題(七五年四月予定)
〔2006年1月2日掲載〕
《社会政策学会年報》第18集『労働戦線の統一』(御茶の水書房、1974年10刊)による。