社会政策学会史料集



『社会政策学会年報』第10集 学会記事

第二十三回学会大会
六月二日(金)・六月三日(土)、明治大学
開会の辞 小島 憲
挨拶 佐々木吉郎
自由論題報告
(1) 産業国有化問題における資本と労働−第一次大戦後イギリス労働組合運動の分析− 明治大学 栗田 建
(2) 我国労働市場についての一考察 慶応大学 佐野陽子
(3) 戦後フランスにおける最低賃金制度の発展 労働科学研究所 藤本 武
共通論題 「技術革新と労働問題」
 同志社大学 三戸 公
 高知大学 松井栄一
 東京大学 小林謙一
 日本女子大学 松尾 均
 法政大学 舟橋尚道
 東京大学 東洋高圧経済調査班
 東北大学 荻野正造
総括討論 座長 東京大学 大河内一男
 大会は両日とも二百名をこえる盛会であった。共通論題の大部分は実態調査の成果の発表であり傾聴すべき内容にとんでいた。また、第一日目夕刻にもたれた懇親会は、明治大学の好意があふれ、きわめてたのしいものであった。

第二十四回学会大会
十一月十三日(月) 十四日(火)、長崎大学
開会の辞 小島 憲
歓迎の辞 河野吉男
自由論題
(1) 最近における労働者生活時間構造 労働科学研究所 藤本 武 下山房雄
(2) 家内労働と労働者家族 立教大学 近松順一
(3) クラフト・ユニオンの共済制度−一九世紀末における実態分析− 東京大学 関谷嵐子
(4) 最近における労働力流動性の変化について 経済企画庁 石崎唯雄
(5) 石炭鉱業における合理化の現段階的特質 九州経済調査会 大里仁士
共通論題「第二組合」 静岡大学 角田 豊 九州産業労働科学研究所 原 嘉彦 九州大学 林 迪広
総括討論 座長 九州大学 正田誠一
 大会は遠路長崎に集まった百余名の会員によって盛会裡におこなわれた。報告者の都合で、共通論題報告の数は少なかったが、日鋼室蘭争議、三池争議の事例調査をふまえた問題提起があり、数人の主要討論者の討論もあって、論議は活発であった。懇親会は長崎市長の招宴としておこなわれ、きわめてなごやかであった。大会後、会員は長崎大学河野教授の御配慮によって、三菱長崎造船所、高島炭鉱などを見学することができた。

 あとがき
 第一〇集『労働市場と賃金』をおおくりいたします。諸先生が、高い水準のご労作をおよせくださいましたので、読者諸賢にも十分にご吟味いただけるものと、いささか自負しております。
 わが国労働市場の諸問題は、つとに本学会員をふくめて多くの人々によって論議されてまいりましたが、この年報により、若干の外国との比較研究の成果をもとりいれつつ、議論の一そうの進展が期待されます。
 賃金をめぐる論争も、わが学会の内外でなお展開されるものと思われますが、とくに賃金格差の問題を中心とした本号の力作は、当面の課題を検討するためにも、好個の素材たりうるものと確信しております。
 労働市場にせよ賃金にせよ、問題は理論と実際の二側面から追求さるべきであり、しかもその接近の方法は多岐をきわめるであろうことは容易に想像されます。この年報では、そのゆえに、統一的な方法を前提とはしないで、数多くの問題点を摘示することに努力いたしました。読者諸賢が、これらの摘示された諸問題点を、いかに把握し、いかに分析し、いかに論究するかということこそが、この年報の編集意図の最たるものの一つであります。もとよりこの年報は、壮大な研究対象への一つの踏み石たるにとどまるものであることは、申すまでもありません。この踏み石のうえに、さらに発展した社会科学的検証にたえうる研究成果が、陸続とうみだされることを期待したいものであります。
 執筆者の諸先生および学会内外の読者諸賢には、公刊の遅れましたことを、心からおわび申しあげます。まさに、日本経済における労働事情の諸問題のゆえに、この種の学術的出版物の定常的な刊行が、いちじるしく困難になってまいりましたことは、すでにご承知のとおりであります。編集委員一同、出版書肆の協力をえまして、よりよい年報の公刊維持に努力したいと思っております。わが学会の再発足以来、ここに第一〇冊目の年報をおおくりするにあたり、読者諸賢の大きなお力ぞえを望むゆえんであります。
 一九六一年一二月

〔2006年1月2日掲載〕


《社会政策学会年報》第10集『労働市場と賃金』(有斐閣、1961年12月刊)による。






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