『社会政策学会誌』第5号 学会記事(2000年度)
1 大会関係
例年どおり,春・秋2回の大会(第100回大会および第101回大会)を開催した。大会プログラムを以下に掲げる。
第100回大会(於:明治大学駿河台校舎リバティ・タワー実行委員長:栗田健会員)
2000年5月27日(土)〜28日(日)
【共通論題】自己選択と共同性−20世紀の労働と福祉−
コーディネーター:佐口和郎(東京大学)
1. グローバリズムと社会的セイフティネット 金子 勝(法政大学)
2. 『雇用流動化』論の歴史的意味 佐口和郎(東京大学)
3. 20世紀と福祉システム−日本を中心に− 玉井金五(大阪市立大学)
4. 20世紀の家族と自己変容−選択と共同性の間− 中川 清(慶應義塾大学)
【総括討論】
座長:岩田正美(日本女子大学)
【テーマ別分科会】
《第1分科会》現代社会保障の問題と改革課題
座長:工藤恒夫(中央大学)
1. 所得保障 唐鎌直義(大正大学)
2. 医療保障 西岡幸泰(専修大学)
3. 社会福祉・介護サービスの保障−社会福祉構造改革,市場化と公的責任− 芝田英昭(立命館大学)
《第2分科会》今日の人材育成問題−技能・訓練問題を中心に−
座長:木村保茂(北海道大学)
1. 合理化と教育訓練の階層性−鉄鋼業と中小企業の事例から− 上原慎一(鹿児島経済大学)
2. テクニシャン養成の現段階−自動車及び電機産業を中心に− 永田萬享(福岡教育大学)
3. ドイツにおける職業教育の展開 久本憲夫(京都大学)
《第3分科会》提言:ジェンダー政策−パッケージ−均等待遇原則と個人単位−
座長:大沢真理(東京大学)
発題者:
雇用差別禁止 浅倉むつ子(東京都立大学)
雇用保険 小倉波子(東京市政調査会)
年金 伊田広行(大阪経済大学)
介護保障 袖井孝子(お茶の水女子大学)
《第4分科会》社会環境の変化と生産システム革新
座長:上井喜彦(埼玉大学)
1. 社会環境の変化と企業・組織・生産革新 藤田栄史(名古屋市立大学)
2. ボルボ・ウデヴァラ方式の現在(auto nova工場)とその生産システム原理の可能性 野原 光(広島大学)
3. セル生産方式の展開−現状と特徴− 浅生卯一(弘前大学)
(*浅生会員は交通事故に遭遇し,大会当日の報告が不可能となった)
《第5分科会》家族と労働供給戦略
座長:山本郁郎(金城学院大学)
1. 戦前期日本の「小経営」と家族労働力−在来産業の事例を中心として− 谷本雅之(東京大学)}
2. インドネシアにおける小営業と家族労働力−織物業地場産業の事例から− 水野広祐(京都大学)
《第6分科会》社会保障の国際比較−日韓比較
コディネーター:埋橋孝文(大阪産業大学)
コメンテーター:李 静淑(四国学院大学)
1. 社会保障・社会福祉における日韓比較 崔成龍(同志社大学大学院生)
2. 医療保険制度の日・韓比較 帳炳元(日本社会事業大学社会事業研究所客員研究員・韓国保健福祉部保険政策課長)
【自由論題】
《第1会場》労使関係(1)
座長:浜岡政好(仏教大学)琶
1. アメリカ公民権法の人事管理へのインパクト 片岡洋子(京都大学大学院生)
2. 国家公務員の勤務評定制度−戦後初期における制度導入・形骸化過程の分析− 岡田真理子(東京大学大学院生)
3. 戦前期日本における「勤労者」像の形成 佐藤充泰(横浜国立大学大学院生)
《第2会場》労使関係(2)
座長:中原弘二(九州国際大学)
1. EU社会政策と市場経済−サンプル多国籍企業の欧州ワークス・カウンシルに対する評価について− 中野 聡(豊橋創造大学)`,
2. 「人に依存した生産形態」の展開と人材活用 白井邦彦(釧路公立大学)
3. 労働者協同組合における管理と労働 塚本一郎(佐賀大学)
《第3会場》社会福祉・社会保障
座長:坂脇昭吉(鹿児島大学)
1. 企業福祉をめぐる最近の研究動向 桜井善行(名古屋市立大学大学院生)
2. 公的介護保険とホームヘルプ労働 佐藤卓利(立命館大学)
3. 阪神・淡路大震災被災者の生活再建と社会保障制度との接点を考える−西宮市内応急仮設住宅入居世帯の生活調査を素材として− 金持伸子(日本福祉大学名誉教授)
《第4会場》ジェンダー
座長:三富紀敬(静岡大学)
1. 自動車産業における女性参入の実態−現場の労働体験から− 首藤若菜(日本女子大学大学院生)
2. 高度成長期の総評労働組合運動と女性組織−家族賃金イデオロギーをめぐって− 山田和代(筑波大学)
3. 人事制度の変化とジェンダー 大槻奈巳(上智大学大学院生)
第101回大会(於:立命館大学衣笠キャンパス以学館 実行委員長:浪江巌会員)
2000年10月28日(土)〜29日(日)
【共通論題】「福祉国家」の射程
1. 比較福祉国家の可能性 宮本太郎(立命館大学)
2. 福祉国家の歴史から複合構制史へ 高田 実(九州国際大学)
3. 東アジア福祉国家とその新たな挑戦 イト・ペング(関西学院大学)
4. ワークフェア概念と福祉国家の転換 池上岳彦(立教大学)
5. 福祉国家と行財政 山本 隆(岡山県立大学)
6. 福祉国家と平等−ジェンダー視点から− 大沢真理(東京大学)
【総括討論】
座長:西村豁通(同志社大学),深澤 敦(立命館大学)
討論者:埋橋孝文(大阪産業大学),平岡公一(お茶の水女子大学),高島進(日本福祉大学),大本圭野(東京経済大学)
【書評分科会】
《日本の賃金構造》
座長:能塚正義(大阪経済法科大学)
遠藤公嗣(著)『日本の人事査定』(ミネルヴァ書房,1999年) 橋元秀一(國學院大學)
木下武男(著)『日本人の賃金』(平凡社,1999年) 黒田兼一(明治大学)
《日本型生産システム》
座長:石田光男(同志社大学)
浅生卯一・猿田正機・野原光・藤田栄史・山下東彦(著)『社会環境の変化と自動車生産システム:トヨタ・システムは変わったのか』(法律文化社,1999年) 土田俊幸(長野大学)
三井逸友(編著)『日本型生産システムの評価と展望:国際化と技術・労働・分業構造』(ミネルヴァ書房,1999年) 鈴木良始(北海道大学)
《ヨーロッパ社会保障の潮流》
座長:上掛利博(京都府立大学)
三富紀敬(著)『イギリスの在宅介護者』(ミネルヴァ書房,2000年) 井岡 勉(同志社大学)
岡 伸一(著)『欧州統合と社会保障:労働者の国際移動と社会保障の調整』(ミネルヴァ書房,1999年) 引馬知子(新潟青陵大学)
川口清史・富沢賢治(編)『福祉社会と非営利・協同セクター:ヨーロッパの挑戦と日本の課題』(日本経済評論社,1999年) 手島繁一(法政大学)
《雇用政策の変貌と課題》
座長:久本憲夫(京都大学)
伍賀一道(著)『雇用の弾力化と労働者派遣・職業紹介事業』(大月書店,1999年) 長井偉訓(愛媛大学)
依光正哲・石水喜夫(編著)『現代雇用政策の論理』(新評論,1999年) 笹島芳雄(明治学院大学)
仲野組子(著)『アメリカの非正規雇用:リストラ先進国の労働実態』(青木書店,2000年) 小池隆生(専修大学)
《福祉国家転換への模索》
座長:佐藤卓利(立命館大学)
武川正吾(著)『社会政策のなかの現代:福祉国家と福祉社会』(東京大学出版会,1999年) 井上信宏(信州大学)
藤村正之(著)『福祉国家の再構成:「分権化」と「民営化」をめぐる日本的動態』(東京大学出版会,1999年) 豊田謙二(福岡県立大学)
神野直彦・金子勝(編)『「福祉政府」への提言:社会保障の新体系を構想する』(岩波書店,1999年) 田中きよむ(高知大学)
《再編下の女性労働》
座長:服部良子(大阪市立大学)
脇坂 明(著)『職場類型と女性のキャリア形成(増補版)』(御茶の水書房,1998年) 川口 章(追手門学院大学)
明泰淑(著)『韓国の労務管理と女性労働』(文眞堂,1999年) 居神 浩(神戸国際大学)
2 総会関係
第100回大会総会
日時 2000年5月27日(土)17:00〜17:55
場所 明治大学駿河台校舎リバティ・タワー1階エントランスホール
参加者 150名
議長 熊沢誠会員
1. 伊藤セツ代表幹事から1999年度活動の報告が,また遠藤公嗣幹事から日本学術会議選挙結果の報告があった。
2. 森ます美幹事から会計決算報告があり,島崎晴哉会計監査による監査報告を受けて,審議・了承した。
3. 規程関係としては,伊藤代表幹事から「幹事の選出に関する規程」を「役員選挙に関する規程」と改める件並びに会則第13条の改正(「役員が在任中に死去し,あるいは長期間の病気・留学などやむをえない事情により辞任するなどして欠員が生じたときはこれを補充する」規定の追加)の提案があり,審議・決定した。
4. 学会改革に関し,上井幹事から大会企画委員会の設置,秋季大会における自由論題の設置,学会誌改革(学会誌偶数号への自由投稿欄の設置,出版社の一本化等)を102回大会までに具体化すること,102回大会から大会参加費(一般会員3000円,院生会員2000円)を徴収する件が提案され,審議・決定した。ただし,提案に含まれていた非会員の大会参加費の金額に関しては審議未了となった。
5. 4.を踏まえて伊藤代表幹事から2000年度活動方針が提起され,了承された。
6. 伊藤代表幹事が名誉会員として,小川政亮,佐野稔,島崎晴哉,戸木田嘉久,内藤則邦,星島一夫,吉村励の7会員を推挙した。
7. 1999年の郵送投票で決定した選挙選出幹事(16名の選挙選出幹事名は『社会政策学会誌』第3号掲載の「学会記事」参照)による幹事会で下記8名の推薦幹事が選出されるとともに,互選により上井喜彦幹事が代表幹事に選出され,事務局本部を埼玉大学経済学部に置くことが決定された。上井新代表幹事がその報告をおこない,新役員を紹介した。
池田信,禹宗杬,斎藤義郎,武田昌次,浪江巌,早川征一郎,森廣正,鷲谷徹(50音順)
8. 荒又選考委員長から,第6回社会政策学会賞審査経過報告と,上田修会員が学術賞を,遠藤公嗣会員と宮本太郎会員が奨励賞を受賞された旨発表があった。
第101回大会臨時総会
日時 2000年10月28日(土)17:30〜18:15
場所 立命館大学衣笠キャンパス以学館第1号ホール
参加者 100名
議長 早川征一郎会員
1. 上井代表幹事より100回大会総会で審議未了となった非会員の大会参加費の金額を会員と同額とする(一般3000円,学生・院生2000円)という提案が行われ,審議・決定した。
2. 禹宗?幹事より2001年度予算案が提案され,予算作成上の留意点の説明,および大会参加費収入の予算化によって「この問続いてきた繰越金の食い潰しにようやく歯止めがかかる」が「財政事情は依然として厳しい」という見通しが述べられた。審議の結果,原案どおり決定した。
3. 森建資春季大会企画委員長より2001年5月26,27日に中央大学で開催される102回大会の企画について(共通論題「社会変動と経済格差」),玉井秋季大会企画委員長より同年10月20,21日に東北学院大学を開催校として行われる103回大会の企画(共通論題は「グローバリゼーションと社会政策の課題」を予定)について,それぞれ報告があった
4. 森廣正社会政策学会誌編集委員長より学会誌第4号の編集・発行作業の進捗状況および学会誌一本化の検討状況について報告があった。
5. 上井代表幹事より「社会政策学会(戦前)史」小委員会を,戦後史を含めた「社会政策学会史」小委員会に改組する件について報告があった。
6. 鷲谷徹幹事より中央大学大会実行委員会を代表して102回大会への参加を呼びかける挨拶があった。
3 1999年度第6回社会政策学会賞受賞者・作品
第6回社会政策学会賞選考委員会委員長 荒又重雄
委員 石田光男・大塚忠・坂口正之・西成田豊
学術賞:上田修『経営合理化と労使関係−三菱長崎造船所,1960-1965』(ミネルヴァ書房,1999年)
奨励賞:遠藤公嗣『日本の人事査定』(ミネルヴァ書房,1999年)
宮本太郎『福祉国家という戦略−スウェーデン・モデルの政治経済学』(法律文化社,2000年)
(学会本部事務局記)
〔2007年11月29日掲載〕
《社会政策学会誌》第5号〔『社会政策学会年報』第45集〕『自己選択と共同性──20世紀の労働と福祉』(御茶の水書房、2001年3月刊)による。