『社会政策学会誌』第3号 学会記事(1999年度)
1 大会関係
例年どおり,春・秋2回の大会(第98回大会と第99回大会)を開催した。大会プログラムを以下に掲げる。
第98回大会(慶應義塾大学経済学部担当:責任者 小松隆二会員)1999年5月29日(土)〜30日(日)
【共通論題】社会政策における国家と地域(コーディネーター:堀内隆治)
司会:高橋祐吉(専修大学)
1.国家政策と地域運動−社会政策学における国家と地域 堀内隆治(下関市立大学)
2.原子力開発と住民 菅井益郎(國學院大学)
3.戦後雇用問題と社会政策−地域雇用の視点から− 木村隆之(岐阜経済大学)
4.コミュニティ・ユニオンの組織と活動 高木郁朗(日本女子大学)
5.成熟過程の市民社会における公共と協同の役割−労働者協同組合運動・高齢者協同組合運動の実践から 永戸祐三 (日本労働者協同組合連合会)
6.福祉政策における国家主導と地域社会−市民までへの分権と中央政府への集権のせめぎあい 大谷 強(関西学院大学)
【総括討論】
座長:荒又重雄(釧路公立大学)
【テーマ別分科会】
《第1分科会》社会保障部会−社会保障構造改革の現状と課題
座長:相澤與一 (長野大学)
1.先送りされる社会保障構造改革 田多英範(流通経済大学)
2.地域介護様式と公的介護保険制度 平野隆之(日本福祉大学)
《第2分科会》労働史部会−イギリス労働史研究のフロンティア
座長:市原 博(城西国際大学)
1.世紀転換期ウェールズにおけるベンリン争議 久木尚志(北九州大学)
2.19世紀末の労働者クラブと「シティズンシップ教育」 小関 隆(東京農工大学)
コメンテーター:小野塚知二(東京大学)
《第3分科会》少子高齢部会−少子化と高齢化を結ぶもの
座長:高田一夫(一橋大学)
1.高齢化時代の社会政策を検討する 塩田咲子(高崎経済大学)
コメンテーター:岩田正美(日本女子大学)・玉井金五(大阪市立大学)・中川 清(慶応義塾大学)
《第4分科会》福祉国家の国際比較
座長:埋橋孝文(大阪産業大学)
1.公的年金制度における普遍性と最低保障の規定要因 鎮目真人(北星学園大学)
2.日本型福祉国家におけるキャッシュ,ケアと女性の市民権−家族政策のジェンダー議論を手がかりに イト・ペング(北星学園大学)
3.家族政策の国際比較研究の現状・課題・方法−日本と英国との比較を例に 所 道彦(英国ヨーク大学大学院生)
《第5分科会》大卒女性のキャリアパターンと就業環境
座長:木下武男(鹿児島経済大学)
1.初職を退職した女性のキャリアパターン 遠藤公嗣(明治大学)・木下武男(鹿児島経済大学)・森ます美(昭和女子大学)
2.「継続型」女性の就業とキャリアパターンの規定要因 森ます美(昭和女子大学)・木下武男(鹿児島経済大学)・遠藤公嗣(明治大学)
コメンテーター:脇坂 明(学習院大学)
【自由論題】
《第1会場》社会福祉制度
座長:岩田正美(日本女子大学)
1.社会福祉事業法の制定についての一考察 野澤由美(新潟大学大学院生)
2.フランスにおける家族手当制度の歴史的生成過程−わが国の「児童手当制度」改善の糸口を求めて 宮本 悟(中央大学大学院生)
3.イギリスにおける福祉行政機構改革 横山北斗(弘前大学)
《第2会場》介護保険とホームヘルプ
座長:三富紀敬(静岡大学)
1.介護の社会化にみるアンペイドワーク−ホームヘルプ労働調査から 新村友季子(奈良女子大学大学院生)
2.介護保険制度の給付額設定に関する論点整理−現状の在宅介護の費用計算を通して 森 詩恵(大阪市立大学大学院生)
3.介護保険制度におけるサービス水準問題−問題の構造と分析枠組 平岡公一(お茶の水女子大学)
《第3会場》非常勤・規制緩和・下請け
座長:上井喜彦(埼玉大学)
1.大学非常勤講師の就労実態と社会保障−首都圏大学非常勤講師組合の調査より 南雲和夫(法政大学)
2.教育の規制緩和と大学教員の労使関係−大学教員の解雇が現実化しているオーストラリアを例として 長峰登記夫(法政大学)
3.建設産業における労務下請と自営的就業 吉村臨兵(奈良産業大学)
《第4会場》経済不平等・社会諸階級
座長:大沢真理(東京大学)
1.現代アメリカにおける不平等の展開とその特質 小池隆生(専修大学大学院生)
2.社会諸階級と近代家族−SSMデータによる計量分析 橋本健二(静岡大学)
《第5会場》外国の労働経済
座長:石田光男(同志杜大学)
1.業績管理・業績考課給の展開とイギリス的経営 上田眞士(京都大学大学院生)
2.欧州ワークス・カウンシルと日系多国籍企業 中野聡(豊橋創造大学)
3.「貯蓄信用組合」活動とコミュニティータイにおけるUCDOのめざすコミュニティ開発の評価 遠州敦子(佛教大学)
第99回大会(鹿児島大学教育学部担当:責任者 坂脇昭吉会員)1999年10月23 (土)〜24(日)
【共通論題】社会構造の変動と労働問題
1.社会構造の変動と労使関係 中村眞人(東京女子大学)
2.賃金制度の見直しと賃金水準・賃金構造 海野 博(岐阜経済大学)
3.「家族賃金」論の争点とジェンダー−「人間らしい生活」とは何か 中川スミ(関西大学)
4.技術革新と労働編成の変化−製造業を中心に− 富田義典(佐賀大学)
5.規制緩和と日本型資本主義−日本の「失われた十年」− 野村正實(東北大学)
6.90年代の財界戦略と労働者状態−労働運動の可能性を探る− 牧野富夫(日本大学)
【総括討論】
座長:熊沢誠(甲南大学)
主討論者:山田信幸(帝京大学),伍賀一道(金沢大学),渡辺千寿子(仏教大学),京谷栄二(長野大学)
【書評分科会】
《アメリカ労使関係史》
座長:浪江 巌(立命館大学)
栗木安延(著)『アメリカ自動車産業の労使関係−フォーディズムの歴史的考察−』(社会評論社 1997年) 今村寛治(熊本学園大学)
平尾武久 伊藤健市 関口定一 森川 章(編著)『アメリカ大企業と労働者−1920年代労務管理史研究−』(北海道大学図書刊行会1998年) 仁田道夫(東京大学)
《現代日本の労働》
座長:上井喜彦(埼玉大学)
富田義典(著)『ME革新と日本の労働システム』(批評社 1998年) 湯浅良雄(愛媛大学)
井上雅雄(著)『社会変容と労働−「連合」の成立と大衆社会の成熟−』(木鐸社 199年) 高橋祐吉(専修大学)
久本憲夫(著)『企業内労使関係と人材形成』(有斐閣 1998年) 石井まこと(大分大学)
《労働世界の回顧と展望》
座長:池田信(関西学院大学)
中西 洋(著)『《賃金》《職業=労働組合》《国家》の理論』(ミネルヴァ書房 1998年) 森 建資(東京大学)
伊田広行(著)『21世紀労働論−規制緩和へのジェンダー的対応−』(青木書店 1998年) 久場嬉子(東京学芸大学)
《高齢者の保険・医療・福祉》
座長:中原弘二(九州国際大学)
山下袈裟男(著)『戦後の社会変動と高齢者問題−実証的研究の軌跡』(ミネルヴァ書房 1998年) 清山洋子(西九州大学)
二木 立(著)『保健・医療・福祉複合体』(医学書院 1998年) 渡辺 満(広島大学)
岸田孝史(著)『措置制度と介護保険』(萌文社 1998年) 渡辺武男(同志社大学)
《社会保障・福祉構造の転換と改革》 座長:相澤與一(長野大学)
川上 武(著)『21世紀への社会保障改革−医療と福祉をどうするか−』(勁草書房 1997年) 古川孝順(東洋大学)
古川孝順(著)『社会福祉のパラダイム転換−政策と理論−』(有斐閣 1997年) 杉村 宏(北海道大学)
加藤 寛・丸尾直美(編著)『福祉ミックス社会への挑戦−少子・高齢化時代を迎えて』(中央経済社 1998年) 河野 真(兵庫大学)
2 総会関係
第98回大会総会
日時 1999年5月29日(土)16時40分〜17時50分
場所 慶應義塾大学三田キャンパス西校舎518ホール
参加者 160名
議長 井上喜彦会員
1.活動報告,経済学会連合会報告,学会誌の編集関係
2.決算報告,会計監査報告
3.99年度活動計画(選挙管理委員会の発足,学会誌の改革と発行の時期の変更)
4.99年度予算(案)の承認賛
5.「会費規程」の一部削除
99年度予算は,懸案だった学会事務の一部外部委託を含む内容であったが承認された。「会費規程」の一部削除では,同規程の第3条「前条にかかわらず,春の大会終了後の入会者については初年度会費を6,000円とする。大学院生で,春の大会終了後に入会した者の初年度会費は5,000円とする」を削除した。
第99回大会臨時総会と次期役員選挙結果
日時 1999年10月23日(土)
場所 鹿児島大学教育学部101号教室
参加者 120人
議長 玉井金五会員
1.次期役員選挙結果について二村一夫選挙管理委員長から,郵送による次期幹事・会計監査選挙結果が報告された。幹事(選挙で選出する人数は16人,地域ブロック別)
関東・甲信越(定数8) 中川清,上井喜彦,関口定一,森建資,岩田正美,遠藤公嗣,森ます美,牧野富夫
関西・東海(定数4) 玉井金五,久本憲夫,三富紀敬,伍賀一道
中四国・九州(定数2) 下山房雄,中原弘二
北海道・東北(定数2) 野村正實,木村保茂
会計監査(定数1) 二村一夫
2.2000年度予算について森ます美会計担当幹事から提案され承認された。
3.改革ワーキング・グループ中間報告が上井幹事からなされた。
4.学会誌の編集について黒田編集委員長から報告があった。
5.第18期目本学術会議会員選挙の方針が伊藤代表幹事から出され承認された。大沢真理会員(東京大学)を会員候補として推薦することとした。
3 第5回社会政策学会賞受賞者・作品
1998年中に刊行された学会員の業績に対する第5回社会政策学会学会賞の選考が行なわれ,1999年5月24日の総会で発表,表彰された。
委員長 戸塚秀夫
委員 大塚忠,坂口正之,西岡幸泰,西成田豊
学術賞 該当なし
奨励賞 二木立『保健・医療・福祉複合体−全国調査と将来予測』(医学書院)
富田義典『ME革新と日本の労働システム』(批評祉)
4 名誉会員の推挙
昨年秋の第97回大会で改正された会則第10条によれば,会員歴30年以上で年齢75歳以上の社会政策研究に貢献した研究者であれば,名誉会員は現学会員に限らないことが明記されている。今年度はこの改正条項を生かし,社会政策研究および社会政策学会に多大の貢献をされた次の3氏を名誉会員に推挙した。
黒川俊雄,中鉢正美,西村豁通
(学会本部事務局記)
〔2007年5月13日掲載〕
《社会政策学会誌》第3号〔『社会政策学会年報』第44集〕『社会政策における国家と地域』(御茶の水書房、2000年4月刊)による。