社会政策学会大会 開催校報告



第114回大会(2007年春)開催校報告

社会政策学会第114回大会ポスター


  社会政策学会第114回大会は、2007年5月19日(土)・20日(日)の両日、東京大学本郷キャンパスで開催された。参加者数は427人(会員341人、非会員86人、うち院生会員55人、院生非会員36人)におよび、過去最高であった第112回大会(2006年立教大学、会員352名、非会員74名)とほぼ同じであった。今回は非会員参加者の多かったことが特筆に値する。
  社会政策学会幹事会は第112回大会総会時の議論以来、大会会計の健全化のために検討を重ね、2006年10月に「大会会計指針」を設定した。今回の大会はその最初の適用例であり、以下、「大会会計指針」の運用面での評価も含めて、準備過程から事後処理までの活動について報告する。

1.実行委員会

  2005年春頃から具体的な打ち合わせは進めていたが、第114回大会実行委員会が組織されたのは2006年5月19日の会合においてであった。そこでは、実行委員長に森建資、事務局長に小野塚知二を選出したほか、必要会場数と会場費の見積、懇親会場、大学生協への業務委託、プレコンファレンスの開催等について概略を検討した。
 第2回実行委員会(2006年9月20日)では、第112回大会実行委員会の事務局長であった菅沼隆氏(立教大学経済学部)との打ち合わせ(7月13日、森建資・石原俊時)を踏まえて、留意すべき検討事項(託児所、学生アルバイト、懇親会、教室手配、一日目朝および昼休みの受付の行列、共通論題フルペーパーの袋詰め等)について引き継ぎを受けたほか、実行委員会の組織体制を確定した。実行委員長、事務局長のほかに、プレコンファレンス担当に仁田道夫、プログラム作成担当に中村圭介、会計担当に佐口和郎、会場設営担当に石原俊時(10月以降は春季大会企画委員会連絡担当も兼務)、懇親会・弁当担当に大沢真理、アルバイト要員確保・管理に小野塚を、それぞれ充てた。
 第3回実行委員会(2007年1月25日)では、東大生協への業務委託に関する協議経過を踏まえて、プログラム作成・発送、参加管理、会場およびパワーポイントの準備、プレコンファレンス、託児所、アルバイト要員等の大会開催実務についてさらに具体的に検討し、実施体制を再確認した。また、「大会会計指針」の最初の適用大会となることから、赤字とならないように外部委託も含めて業務の効率化を最大限はかることが確認された。
 第4回実行委員会(4月17日)では、プログラム発送・参加申込開始後の実務についてさらに詳細を検討し、第5回実行委員会(5月15日)では、前日の準備および当日の開催体制について細部を詰めた。
 これ以外に、関連する担当者(および生協関係者と)の小規模な会合や、メイル・電話での打ち合わせは頻繁に行われ、情報共有と意思疎通という点では特に大きな問題は発生しなかった。


2.会場の確保および会場使用料

 2006年5月の段階で、土曜日6会場、日曜日1会場とした場合の会場費を試算し、約8万円となることを確認した。2006年9月には土曜日分科会用の6教室、総会用の1教室、日曜日共通論題用の1教室、およびプレコンファレンス用に金曜日夕方1教室を仮押さえした。共通論題用の教室は当初、第1教室(経済学研究科棟地下)を予定していたが収容力に若干不安があるため(最大340名、試験などで一人おきに着席する場合178名)、第6教室(赤門総合研究棟)に変更した。教室使用料の合計金額は87,500円となった。
 このほかに、幹事会・各種委員会の会合、準備作業、書籍展示販売、会員休憩室、大会要員控え室のために、演習室と共同研究室など合計20室を確保した(これらの使用は無料)。
 2007年2月には、「大会会計指針」の1(会場使用料等減免および補助金獲得)にしたがって、会場使用料免除の可能性を東京大学経済学研究科長に打診したが、経済学研究科の教室等使用料規定に学会の大会使用に対する全免規定がなく、また前例もないことから、容れられなかった。その代わり、経済学研究科長のご配慮により、東京大学経済学振興財団から会場使用料相当額の補助金を得られることとなった。
 2007年4月5日付けで、森実行委員長より経済学研究科事務室に正式の教室使用願いを提出するとともに、建物および教室・演習室の解錠時刻について具体的な要望を示した。


3.委託業者との折衝および大会予算案の作成

 参加申込管理やプログラムの印刷・発送など大会開催業務の一部委託については、すでに2006年5月の段階で東大生協に打診し、委託可能な業務内容や費用概算について情報を得ていたが、11月には、委託事項を最大限に洗い出し、細部を詰める作業を東大生協の担当者との間で進めた。その結果を踏まえて12月12日付けで東大生協より提示された見積額は809,600円で、支出可能な範囲内にないことが判明した。そこで、大学生協学会支援センター(大学生協事業連合)の大会参加者管理システムは利用しない、大会受付等の要員はすべて実行委員会側から出すなど、委託内容を見直した結果、委託費を511,000円に抑え、収支の均衡する大会予算案を策定することが可能となった(委託業務と費用については下表参照)。参加管理は、郵便振替の払込用紙のみで行うこととし、出欠葉書は省略して経費と事務量の節減をはかった。

大会開催業務一部委託の見積(東大生協、2007年1月16日)
プログラム印刷(30頁、1500部)\142,000
実行委員会用封筒(角2*2000枚)\ 28,000
振込用紙印刷(1400枚)\  6,000
プログラム発送料(クロネコメール便\80*1300件)\104,000
プログラム発送作業(\120*1300件)\156,000
参加申し込み管理(受付名簿・名札・領収書作成等\250*300人)\ 75,000
    合   計\511,000

 2007年1月25日の社会政策学会幹事会には、「大会会計指針」の2および3にしたがって大会開催校会計収支計画(後掲「社会政策学会第114回大会開催校会計決算書」の予算列の通り)を提示し、承認された。この収支計画の承認をまって2007年2月27日付で、実行委員会は東京大学消費生活協同組合との間に、大会開催業務一部委託に関する契約書、ならびに個人情報の取扱いに関する覚書を取り交わした。


4.広告および書籍展示販売の募集

 プレコンファレンスの開催(上述の収支計画には計上されていない)も考慮すると、収入が若干不足気味となるため、大会実行委員会の独自の収入源として、大会プログラムへの広告掲載を募集することとし、2007年2月15日に、出版社等9社に対して、広告掲載および大会会場での書籍展示販売について案内を送付した。
 この案内に対して7社から広告掲載の希望が寄せられ、このほかに版下締め切り期日までに申込のあった1社を加え、8社の広告を掲載し、91,000円の収入が得られた。1/4頁を希望する出版社が一つあったが、他がすべて半頁の希望であったため、プログラム上に1/4頁分の空白が発生するのを避けるため、この出版社にも半頁の版下を求めた。掲載料は当初の希望サイズ通り1/4頁分を請求した。なお、締め切りを過ぎてからの掲載希望が3社(うち1社は当初案内を差し上げたものの申し込みのなかった出版社)から寄せられたが、いずれも印刷・発送の都合から不可能なためお断りした。
 また、再三の督促にもかかわらず掲載料の支払いが遅れ、大会開催数日前になってようやく振り込んだきた出版社もあった。
 プログラムへの広告掲載ははじめての試みなので、広告掲載料はA4判半頁を12,000円、1/4頁を7,000円と低めに設定したが、後になって数社の担当者から、安いので驚いたといった感想をいただいた。どの学会でも学会誌の刊行時期は予定通りにはいかないが大会プログラムは刊行時期が非常に明瞭であること、プログラムは会員だけでなく非会員参加者も必ず手に取るものであることなどから、広告媒体としては出版社にとって学会誌よりもむしろ好都合と考えられているようである。したがって、今後は他学会の大会プログラムや学会誌の広告掲載料なども調べたうえで、より高めの設定としても差し支えないと考えられる。広告掲載希望する出版社等は少なくとも10社はあるから、掲載料の設定にもよるが、今後少なくとも15万円程度の収入は得られるはずである。社会政策学会第114回大会書籍販売社会政策学会第114回大会書籍販売
 書籍の展示販売については、広告掲載した8社のうち7社から申込があり、さらに、案内を出さなかった出版社から締切後に申込があり、展示販売場所の容量を考慮のうえ、新たに2社のお申し込みも受け、合計10社が大会会場での展示販売を行った。1社当たり机1本(180×90cm)と椅子数脚を提供し、やや狭小ではあったが、本学会関連の書籍多数が一覧できたため大会参加者にとっては便利であった。


5.プログラム等の作成・発送

 プログラムについては、1月から実行委員会で具体的な検討を開始し、春季大会企画委員会からプログラム原稿を入手し次第、印刷に取りかかれるよう、レイアウト、案内図、広告掲載位置などの準備を先行させた。経費節減のため墨一色刷としたが、大会のテーマカラーを定め、プログラム表紙、封筒、懇親会券等はできる限り浅葱ないし薄緑色で統一するようにした。
 プログラム発送用の会員住所等は学会事務センター(ワールドプランニング)からエクセル・ファイルおよびタックシールの形で提供していただいた。
 3月初旬に春季大会企画委員会より送付された最終原稿を入稿し、プログラム1500部、封筒(角2)2000枚、振込用紙1400枚の印刷を生協に依頼した。校正1回を経て、当初の予定通り3月20日にクロネコメール便で国内の全会員宛発送した。なお、外国在住会員宛には航空便あるいはSAL便で郵送した。発送後ただちに、学会ホームページおよび学会メイリングリストを通じて、プログラムが配達されない場合は実行委員会までご連絡いただくよう呼び掛けた。3月末より5月初旬にかけて断続的に十数件の連絡があり、すべて指定された住所へ別途郵送した。発送に用いた会員住所は2月中旬の情報であったが、プログラム不達のほとんどはそれ以降の転居に起因するものであった。


6.事前申込

 この数年、出欠葉書による参加状況の把握をしない大会が増えているが、第114回大会実行委員会でもこの点の利害得失を検討した結果、出欠葉書は用いないことにした。葉書省略の利点は事務量と経費の節約にある。葉書の印刷、発送、返信されたものの整理だけでも事務量は無視しえないが、さらに、葉書と振込用紙の情報が食い違うと(たとえば葉書では懇親会出席となっているのに懇親会費が振り込まれていないなど)、当人に確認する必要が発生し事務量は格段に増大する。振込用紙のみで参加管理を行えば、こうした事務量の大半は節減できる。葉書省略の難点は会場ごとの出席予定者数を事前に把握できない(振込用紙にはそれを記載するスペースがない)ことである。ただ、多くの方が出欠葉書には同時に開催されている複数会場に出席と返事をするし(会場間移動)、当日になって気が変わるかもしれないし、そもそも当日受付参加者の動向は知りようがないため、葉書によって得られる会場ごと出席予定者数の情報は信頼性が低い。したがって、過去の大会では配布されたことのある会場ごとの出席予定者一覧表は今回は作成しなかった。
 今回は開催日が5月19・20日であったため、事前申込の締め切りを4月28日としたが、連休明けにも多くの申込があり、5月17日までに247人の会員が参加費等を振り込んだ(第112回大会の事前振込は291人、第110回大会の出席葉書は255人)。
 事前申込者のリスト、領収書、名札等は、実行委員会との協議に基づき東大生協が作成した。


7.パワーポイントへの対応

 春季大会企画委員会より、すべての会場でパワーポイントを使えるようにとの要望があったため、利用可能性を調査し、すべての会場にプロジェクタが装備されているものの(うち1教室は可搬式)、備え付けのコンピュータはないことを確認した。大会当日にパワーポイントを利用する報告者が持参したコンピュータを接続するのに要する時間と、接続替えににともなって発生しがちなトラブルを避けるために、当日は実行委員会が用意し、動作を確認したコンピュータを用いることとした。そのために、MS Powerpointのインストールされたノートパソコンを、会場数分と予備を合わせて7台、経済学部教務掛、経済学研究科教育研究支援室、社会科学研究所システム管理室から借用する手はずを整えた。社会政策学会第114回大会第8分科会
 また、学会ホームページおよびニューズレターを通じて、パワーポイント利用希望者に対して、@パワーポイントのファイルを事前(5月14日月曜日午後5時まで)に事務局宛に送るとともに、USBフラッシュメモリーに入れた状態でも持参すること、A持参パソコンは接続しないこと、B予め異なる環境での動作確認を推奨することの3点をお知らせした。パワーポイント利用予定者25人のうち、事前にファイルを送った報告者は12人にすぎずなかった。
 各会場のプロジェクタとコンピュータの動作確認は前日(5月19日)の講義終了後に実施し、パワーポイントに不慣れな会場係の習熟もはかった。教室によってAV器機の導入時期や方式が異なり、操作方法も大幅に違うため、この動作確認の作業には予想外の時間を費やした。
 当日は、USBメモリーで持参したファイルを用いた報告者が12名おり、1会場ではあったが、上記の注意が伝達されていなかったためか持参のコンピュータを接続した報告者もいた。後者については、それが報告者2名のテーマ別分科会であったため、幸いなことに大きな遅延等は招かず、実害もなかったが、コンピュータの接続替えは時間の限られている状況では非常に危険なことなので、今後は持参コンピュータを接続しないことについては、企画委員会からも充分に周知徹底すべきであろう。


8.懇親会・昼食・弁当

 東京での懇親会は、「ご当地」の個性を出しにくいが、今回の懇親会の企画はその点を最大の留意事項とした。担当の業者とも相談を重ねた結果、旬の上り鰹、穴子の天ぷら、それに、東京大学に保存されていた戦前の黒麹を用いて造った泡盛「御酒(うさき)」など、予算の許す範囲内で些かの特色を出すべく努力した。当初予算では135人の参加を見込んだが、実際には当日の申込者、特に懇親会場で現金を払って参加された方が多く、有償参加者数が169人におよんだため、鰹、穴子、泡盛が充分には行き渡らなかったのは誤算であった。そうした趣向は別として、食べ物と飲み物は開始後に再三追加注文したので、量的に足りないということはなかったと考えている。
 大会会場から懇親会場(生協第二食堂)までの経路は決してわかりやすくなく、遠回りしてしまう可能性もあったため、当日午後に、経路上に10枚ほどの案内板を設置したほか、懇親会開始30分ほど前から7人の学生・院生スタッフを、経路上の分かれ道の場所に配置して、案内に当たらせた。
 昼食は土曜日については、キャンパス内外ともに多数の飲食店が営業しているため、幹事・委員および大会スタッフ用の弁当を除いて、全員に飲食店利用を勧めた。日曜日は、本郷通り沿いは休む飲食店も多いが、キャンパス内の生協中央食堂が営業しているため、やはり一般参加者向けの弁当の用意はしなかった。


9.会場設営等

 設営に先だって、最も気を使ったのは、大会受付付近が混雑せず、人の流れを滑らかにすることであった。受付のレイアウトだけでなく、大会要員の配置、受付の方式などさまざまに工夫したが、受付を置いた赤門総合研究棟玄関ホールが充分に広かったことも幸いして、行列、混雑、渋滞は発生しなかった。ただ、事前に予測しえなかったのは、来場者の中に、赤門総合研究棟玄関からでなく、西通用口(赤門口)から入ってくる方が少なからず、殊に日曜日に、いたことである。玄関から入れば目の前が受付だが、西通用口から入ると受付を発見しにくいため、受付を素通りした参加者もいくらかはいたように思う。赤門付近の立て看に、入り口を示す矢印を付けておくべきであった。
 最寄り駅から会場までの案内掲示は多いに越したことはないのだが、合法的に設置できる場所はほとんどないので、大いに気を使った。A3判、緑色の紙で、風雨にへこたれないようパウチしたものを、紐とガムテープで電柱などに取り付けた。本郷三丁目駅(丸ノ内線、大江戸線)および東大前駅(南北線)から赤門付近まで合計15カ所ほどに設置したが、決して充分ではなかったであろう。
 立て看板は、40×240cmのものを2本、赤門付近と、赤門総合研究棟玄関前に設置した。
 会場内の掲示もA3緑色の紙で作成し、過剰なほどに貼るよう心掛けた。ただ、赤門総合研究棟と経済学研究科棟との間の行き来は何通りもの仕方があるうえ、最短ルートにはやや急な傾斜路があり足腰の弱い方には不向きなこともあって、一義的に明瞭な掲示をできなかったため、必ずしもわかりやすくはなかったであろう。
 降雨の可能性があったため、傘袋とそれを捨てる箱などを何カ所かにただちに設置できるよう用意しておいた。ゴミ箱、ゴミ袋も多めに設置するよう心掛けたほか、会場係にも会場の忘れ物・ゴミの始末等にも配慮するよう依頼した。
 これらの設営作業は前日(5月19日)の午後に、各会場のプロジェクタ・コンピュータの接続と動作の確認やプレコンファレンスの準備と並行して、6〜10人ほどで進めたが、演習室のほとんどと一部の教室が夕方遅くまで授業で使用中であったため、予定よりやや長引き、夜十時近くまでかかった。


10.大会スタッフの確保


 「大会会計指針」の1(大会開催校会計の支出目安)では、アルバイト院生・学生の必要人数の大まかな目安として、前日設営から土日両日の諸業務と交替要員・余裕・予備を含めて280人時と示されている。大会実行委員会では2007年1月から、大会前日および当日業務の洗い出しとアルバイト必要人数の算定をはじめ、柔軟かつ機動的に用いるなら約260人時で運営可能との結論を3月末までに得た。このほかに教員(助手・学振特別研究員を含む)の必要業務量を約140人時と算定した。この計算にもとづき、大学院および学部学生からアルバイトを募集し、4月末までにほぼ必要人数を確保した。アルバイトの院生・学生スタッフの説明会を前日(5月19日昼休み)に開催し、全般的な注意のほか、業務別の要領書を交付した。
 受付は、土曜日の朝および昼休みなど、しばしば行列が発生して、時間に余裕のない参加者(次のセッションの報告者・座長などを含む)をやきもきさせる場所となってきたため、今回の大会では待たずに済む受付を目指した。事前申込者の受付は最大4口用意して、学部学生4名で当たらせ、院生2名を支援と特殊な対応のために張り付かせた。閑散時には適宜休憩を取れるようにしたほか、業務の単調さ・退屈さを軽減するため、学部学生の4名は飲み物係2名と併せてローテーションを組むこととした。この体制で事前申し込み受付は行列ができなかっただけでなく、土曜日午後や日曜日は明らかに暇を持て余し士気も低下しがちであったため、5名で充分対応可能であろう。
社会政策学会第114回大会受付
 当日受付は、記帳していただき、会員・非会員の別、院生・その他の別をうかがったうえで、参加費や懇親会費の現金授受、領収書の作成、名誉会員対応(参加費免除)等々、業務を定型化しがたいうえ、現金管理の責任をともなうため、ここには教員(助手・学振特別研究員を含む)のみを配置することとした。非常に丁寧な対応をして参加者一人当たり5分かかっても、絶対に行列ができないために、最大時(土曜朝・昼休み)8人で8口設けたが(1時間当たり対応可能数96人)、明らかに過大な配置であった。おそらく4人でも行列は発生せず、数分の待ち時間を許容するなら2〜3人でも対応可能であったと考えられる。
 会場係は、会場のAV機器の管理、温度・風通しの管理、騒音や座席不足への対応、座長・司会者との協調等を業務内容として、各会場1名の院生を配置した。午後は二つのセッションの間が短く、休憩を取れないため、セッション中に適宜休憩をとってよいこととした。
 会場巡回係の業務は、各報告のフルペーパーなど配布物(事前に事務局宛送付されたものと、大会当日に受付に持ち込まれたもの)を各セッション開始前に、会場前の机に配置するとともに、各セッションの表示・掲示物を貼り替える作業と、セッション中は定期的に会場を巡回して異常に備えることの2つである。赤門総合研究棟(3会場)と経済学研究科棟(3会場)をそれぞれ院生1名が担当することとし、午後のセッション間は余裕がないため、応援を各1名ずつ付けた。
 飲み物係は、飲み物と紙コップを用意した机に付いて、空いたペットボトルや紙コップの始末、足りなくなった飲み物の補充(生協の担当者に注文を出す)をおもな業務とした。当初、ペットボトル入りの飲料と紙コップ、およびゴミを入れるポリ袋のみを配置して、定期的に会場巡回係が見て回ることで済まそうかとも考えたが、飲み物の安全性を考慮して、常時、学部学生を配置することにした。陽が射して暑くなると急激に消費量が増えたため、常時配置してなかったなら、補充が間に合わなかった可能性がある。土曜日は赤門総合研究棟と経済学研究科棟のそれぞれの飲み物場所に1名ずつ、日曜日は赤門総合研究棟のみ1名の配置であった。いずれも、1名でその場所を離れてはいけない孤独な業務であるため、事前申込受付の学部学生と輪番で当たらせた。
 このほか上記の業務に就いた院生・学生を、短時間ではあるが、総会担当、懇親会誘導担当、懇親会担当、後片付けなどの業務にも当たらせた。また、大会前日および当日に、自発的に協力を申し出てくださった院生が複数いて、大いに助かった。これらの院生にもアルバイト謝金を支払うことにしたため、結果として学生・院生の業務量は278.75人時となった。


11.託児所

 東京大学本郷キャンパスは、休日に東京大学関係者以外が用いることのできる託児所が整備されていないため、学外近隣の託児施設を紹介することにした。当初、会場内に託児用の部屋を設置して業者に出張をお願いすることも考慮したが、安全を確保できる適当な部屋がないため断念した。学外の託児施設も休日の臨時利用の可能なものは、ごく近傍にはなく、結局、後楽園の東京ドームホテル7階のキッズスクウェアを紹介することとなった。地下鉄で一駅、タクシーで5分ほど、歩いたら15分ほどで決して便利ではないうえ、利用料金も基本料金2時間5000円、以後30分につき1250円と高かった。利用料金が1日当たり1万円を超える(すなわち4時間を超えて利用する)場合は超過分を大会実行委員会が負担することとして、プログラムにもそう明記したが、それでも充分に高いことに変わりはなく、事前に2件のお問い合わせはあったものの、最終的に申込は1件もなかった。高く、遠く、利用しづらかったのは間違いない。
 責任を負いうる託児サービスを選択したら高額になり、会場内に託児施設を仮設するなら何かあった場合に、施設の設置・提供者としての大会実行委員会は責任を負いがたいというのが、大会中の託児を難しくしている要因だが、実行委委員長や事務局長が昔取った杵柄でおんぶして預かるかといった冗談しか出ないほどに、満足のいく解法を発見するのがむずかしい問題であった。


12.プレコンファレンス

 大会前日の夕刻に開催する方向性は実行委員会が組織された2006年5月に確認され、同年9月までには、「雇用システムの未来」というテーマで菅野和夫(明治大学)、稲上毅(法政大学)の両氏(お二人とも東京大学名誉教授)に講演を依頼することが決定された。また、外部の関連団体に声をかけ、一般公開、入場無料とすることも決定された。
 大会と合わせてプレコンファレンスを宣伝するポスターを作成し、学内掲示板に貼ったほか、関連書団体、および都内近県の主要大学に掲示をお願いした。当日は平日夕刻にもかかわらず多数の参加者を得て、盛況であった。


13.分科会


 春季大会企画委員会の指示にもとづき6教室を確保した。収容数が44人、66人と小さな教室が含まれていたため、教室の割り振りには苦労した。44人の第4教室で座席が足りなくなったため、急遽、近隣の演習室から椅子を運び込んで対処した。また、140人の第2教室でも座席数自体は足りていたものの、詰めて座りにくい構造のため立ち見が発生し、これも椅子を補充した。
 報告者のフルペーパーは、締め切りの5月11日までに48本中23本が到着していた。また、前日までに16本が到着し、9本は当日の持ち込みとなった。前日までの到着状況は約80%で前年春季大会(第112回)とほぼ同様であった。自由論題報告のほとんどが締め切りまでに、あるいは若干の遅れで到着していたのに比し、テーマ別分科会は締切後の提出や当日持ち込みが際だって多かった。


社会政策学会第114回大会総会

14.総会

 今回は総会議題が多かったため、円滑に進むよう心掛けて用意したが、総会でパワーポイントが使えないという失態を演じた。前日のプレコンファレンスの際に、AV機器を手順通りに終了させなかったことが原因であった。


15.共通論題

 前年度の参加者総数が400名を超えており、共通論題フルペーパーは大会参加者全員に行き渡るのが原則であるため、今回は共通論題フルペーパーについては印刷数を500とした。 
非会員報告者のフルペーパー印刷については、2002-04年期第5回幹事会(2002年10月18日、中京大学)において、「今後は報告者が印刷できないと申し出たときは事務局(本部、大会企画委員会)の責任で作成することにした」のであるが(ニューズレターNo.34、4頁)、その後もこの原則は必ずしも守られておらず、今回も春季大会企画委員会から再三にわたって強い要請があったため、期日も限られていることから、やむなく大会実行委員会で印刷することとした。現在の共通論題企画のあり方では、非会員報告者の招聘に開催校側はまったく関与していないので、その結果発生しうるフルペーパー印刷という業務も招聘を決定した企画委員会ないし学会本部が責任を負うという原則は、改めて確認される必要があろう。むろん、大会実行委員会と企画側との間で有償ないし無償での業務委託が合意されることは一向に差し支えないが、当然のように開催校側に押し付ける悪しき慣行は見直さなければなるまい。
社会政策学会第114回大会共通論題会場  従来は、共通論題フルペーパーを封筒に詰めて、受付で参加者に手渡すという慣行があったようであるが、今回は事前準備作業と受付業務双方の節約のため、机上に配置されたものを参加者各自が適宜取って行く方式に変更した。参加者が必ず通り、また足を止めやすい場所として、共通論題会場の下(書籍展示販売の部屋の前)に机を2基置いて、土曜日朝からそこにフルペーパーを配置するとともに、受付で必ずフルペーパーの件を口頭でお伝えするよう徹底した。土曜日の朝に500部すべてを並べると簡単に崩れてしまうので、100部ほど配置して、足りなくなったら補充するということを繰り返した。


16.その他大会当日およびそれ以降の業務

 大会とは物に注目するなら、壮大な消費の場であり、膨大なゴミが発生する。ペットボトル、弁当箱などの飲食関係は生協と事前に綿密に打ち合わせて各所にゴミ袋、ゴミ箱を設置するようはかった。また、フルペーパー残部など大量の紙ゴミについては、実行委員長が事前に、清掃業者に対して、印刷されたコピー用紙類を大量に廃棄する旨了解を得て、経済学研究科の日常のゴミ処理に支障が出ないようにはかった。
 土曜日は分科会終了後ただちに総会、懇親会へ移るため、実質的な後片付けはほとんどできなかった(懇親会場までの経路案内掲示のみは懇親会終了後に撤去した)が、日曜日は経済学研究科棟は大会用には使わなかったため、午前中に教員スタッフとアルバイトの院生数人とで機動的に分担して、土曜日の各会場の掲示物の撤去、原状復帰、ゴミ処理等を済ませ、日曜日午後には、赤門総合研究棟の共通論題会場以外の後片付けも済ませた。共通論題終了時までには受付や立て看・学外掲示も撤去し、共通論題会場を残すだけに後片付けを進めた。共通論題会場に飾られた生花や、弁当・茶菓子の処理などにいくらか時間を要したものの、日曜日は当初の予定より早く大会業務を終了することができた。社会政策学会第114回大会懇親会
 大会翌日は、コンピュータなど借用備品類の返却、現金の整理、若干のゴミ処理を済ませ、以後、アルバイト謝金の計算・支払い明細の作成・支払金額の用意、受付記帳簿や懇親会当日現金受付記録と現金との照合、生協等への経費の支払い、大会継承物品(名札入れ、実行委員会印、その他文具・記録類)の整理・補充と次期開催校への送付、大会報告の作成、黒字処理方針の決定、その他もろもろの事後の処理に約一ヶ月半を要した。


17.大会会計

 大会開催校会計は当初、学会から繰り入れられる大会開催費百万円で、開催実務費用と会場使用料をまかなう均衡予算を立てた(3.参照)。しかし、2007年3月中旬までには補助金と広告掲載料で18万円弱の増収となることが確実となったため、ポスターの印刷と送付など当初予算にはない支出を行うことが可能となった。
 収入面では、上記の補助金と広告掲載料のほか、懇親会売上も予算案より20万円ほどの増収となった(弁当売上は弁当代支出と均衡を前提にしているためここでは増収要因として考慮しない)。支出面では、東大生協への委託費は、ポスター印刷という追加支出があったものの、いくつかの費目で当初見積より安くなったため、ごくわずかな増加にとどまったほか、他の費目も概ね予算の範囲内で、開催実務費用と会場使用料の和は若干ではあるが予算(百万円)を下回った。懇親会の料理・飲み物の追加注文と売れ残った弁当の買取などの支出増もあったが、収入との差し引きで、348,332円の黒字となった。

社会政策学会第114回大会開催校会計決算


費 目予 算決 算差 額
大会開催費\1,000,000\1,000,0000
補助金\0\87,500\87,500
広告掲載費\0\91,000\91,000
懇親会売上\675,000\878,500\203,500
辨当売上\0\117,600\117,600
合  計\1,675,000\2,174,600\499,600
 




開催業務一部委託\511,000\519,778\8,778
    プログラム・封筒・振込用紙印刷\176,000\176,000\0
    ポスター印刷\0\43,000\43,000
    発送費\104,000\90,000\-14,000
    その他代行作業・管理経費\231,000\210,778\-20,222
会場看板・生花代金\50,000\20,000\-30,000
文具・消耗品・雑費・郵送費\50,000\53,650\3,650
飲み物代金\35,600\37,121\1,521
アルバイト謝金および弁当茶菓子代\275,000\268,419\-6,581
  以上開催実務費用小計\921,600\898,968\-22,632
会場使用料\78,400\87,500\9,100
  以上開催実務費用+会場使用料\1,000,000\986,468\-13,532
懇親会開催費\675,000 \715,000\40,000
弁当代\0\124,800\124,800
合 計\1,675,000\1,826,268\151,268


 大会開催校会計に黒字が出た場合の処理方法は、「大会会計指針」の「7.黒字の場合」 に、「黒字決算となった場合、アルバイト学生への追加謝礼、実行委員会打ち上げ、学科備品等への寄付、あるいは学会本部会計への繰り入れなど、黒字額の処理方法は開催校に委ねられる」と規定されているため、実行委員会内部で検討した結果、以下のような3点の黒字処理方針を採用することにした。(1)「大会会計指針」の「2.支出目安」を若干超えて、大会実務に要した費用を支出する。具体的には、アルバイト謝金の加給、共通論題フルペーパーの印刷などに要した経費、夜間・早朝対応のため会場近隣に宿泊した実行委員(石原俊時)の宿泊費、助手・特別研究員(院生ではないという理由でアルバイト謝金は支払われなかった)への謝礼のための支出で、合計84,943円となった。(2)大会継承物品の名札入れが足りなかったため、学会から300個支給していただくことにしていたが、大会実行委員会が購入したことにして、現物を学会に寄附する(25,200円)。(3)残余の24万円弱を2分し、120,000円を学会に現金で寄附し、118,189円は東京大学社会政策研究基金を新設してそこに寄附する。同基金の管理のために、実行委員会と同じメンバーで同基金運営委員会を組織し、規約にしたがって、社会政策・社会保障・労働問題研究関連の研究会が東京大学で開催される場合の会場借用料、および東京大学に在籍する同分野の大学院学生が国内学会発表等で遠隔地に赴く際に学術研究活動等奨励事業(国内)その他外部資金等から旅費が支出されない場合の旅費補助に支出する。

黒字処理明細表
黒字額総額(収入−支出)\348,332







追加支出\84,943
    アルバイト謝金追加(約4%の加給)\10,795
    共通論題フルペーパー印刷等経費\28,824
    実行委員宿泊費(5月18・19日2泊1名)\15,324
    助手・特別研究員謝礼(\10,000×3人)\30,000
東京大学社会政策研究基金に寄附\118,189
学会へ現金寄附\120,000
学会へ現物寄附(名札入れ紐付き)\25,200


18.最後に

 大会のあり方は開催校によって、また共通論題等の企画によって千差万別であり、安易な一般化は慎むべきだが、今回の大会開催の経験を踏まえて以下の点は指摘できるだろう。第1に、「大会会計指針」を目安として大会を準備し、開催することは可能であり、会場使用料によるが、開催校会計が大きな赤字に陥る危険性はないとの感触を得た。第2に、むしろ、広告掲載や懇親会等の収入で黒字決算の可能性がある。第3に、黒字処理は開催校に委ねられているから、諸支出を膨張させず、業務を効率的・機動的に遂行するインセンティブとなる。
 むろん、第114回大会が上で報告したように大筋では無事に、大過なく、終了することができた背後には、報告者、座長、参加者、幹事会および春季大会企画委員会など関係各位のさまざまなご協力とご理解があったことはいうまでもなく、記して謝意を表する。また、実行委員会の不手際で、不都合や不快を覚えさせるようないたらぬ点も多々あったはずだが、ご寛恕を請うとともに、お気付きの点は、次回以降の開催校の参考にもなるので、是非率直にお知らせくださるようお願いする。

〔小野塚知二〕


【追記】
 2004年の幹事会で東大開催を決めた。別に1897年に社会政策学会が発足してから110年とか、1907年に第1回大会を東大で開いてから100年、といった巡りあわせを重視したのではなかった。東大では長い間社会政策学会の大会が開かれていなかったのである。前回開かれたのは1975年(第50回大会)であり、それから30年以上も経過している。今回の実行委員会のメンバーのなかには、大学院生として第50回大会の準備を行ったものが2名いる(仁田道夫さんと小生)。その時のことを想うと、まさに「少年老い易く」の感がある。今回は、小野塚知二さん、石原俊時さんが獅子奮迅の働きをして下さり、小生のような老人には出番があまりなかった。両氏には深く感謝する。また、プレコンファレンスを快く引き受けてくださった仁田さん、中村圭介さんをはじめ多くの方々のご尽力に対しても感謝の気持ちを捧げたい。


〔森建資記〕