社会政策学会 開催校報告



第102回大会開催校報告


はじめに

 社会政策学会第102回大会は2001年5月26日(土)、27日(日)両日にわたり、中央大学多摩キャンパスで開催された。開催校では専任教員である会員9名で大会実行委員会を組織し、学会幹事会、企画委員会との連携のもと、大会の開催準備、運営にあたった。本稿は実行委員会としての総括であり、学会運営上の任務分担に応じて大会の内容には立ち入らず、組織、運営に限定したものであることをはじめにおことわりしたい。
 端的にいえば、本大会は結果として参加人員、報告者数においておそらく本学会史上最大規模の大会となったが、それに見合った準備・運営がなされたかどうかが総括の基本的視点であろう。以下に3項目に分けて立ち入った分析を行いたい。

1 大会規模

 前述のとおり、第102回大会は本学会史上最大の規模となったと思われるが、まず、参加者数についてみておこう。受付参加者総数は440名、うち会員325名、非会員115名であった。会員の内訳をみると、名誉会員4名、一般会員280名、院生会員41名となっており、非会員の内訳は一般参加者31名、院生・学生参加者74名、報告者10名であった。
 次にこの参加者数を受付日別にみると、初日(26日)に415名、第2日目(27日)に25名となっており、圧倒的多数が初日に受付を済ませていた。第2日目は天候の影響もあり、初日ほどの参加者はなかったが、それでも250名程度が参加したものとみられる。
 率直にいって我々はこれほど多くの参加者があるとは予想していなかった。以下に述べる理由によって、非会員参加者のかなりの増加は予想していたものの、いくつかの事情を考慮したとき、昨年の春季大会である第100回大会(明治大学駿河台キャンパス)と比べてかなりのリミティングファクターがあると考えたからである。即ち、中央大学多摩キャンパスのロケーション(アクセス面でのハンディ)、新たに参加費を徴収すること等の事情。また、実際に、会員からの参加予定ハガキ(含むfax、e-mailによる連絡)による参加通知の数はなかなか伸びず、ハガキの投函締め切り時点の5日後の集計によれば参加予定数は220であり、第100回大会の272名をかなり下回っていた。これらの事情を考慮した場合、参加通知無しの会員参加者及び非会員参加者を含めても、最終的には第100回大会(会員参加者数320名、非会員参加数90名以上(推計))を上回ることはないと考えていた。ただし、非会員参加者については、e-mailや電話による問い合わせがそれなりの数あったことから、学会HPサイトの宣伝効果や、会員ルートでの「クチコミ」宣伝効果の存在は推測され、量的予測はできないものの、かなりの数の参加者があるであろうことは予測していた。
 今大会の特徴の一つは、昨年の第100回大会以来の大会初日にテーマ別分科会・自由論題報告を1日かけて行い、共通論題報告・総括討論は全て2日目に行うという方式のもとで、第1日目の分科会・自由論題が前者11会場、後者5会場、合計16会場で開催されたということである。これは、一連の学会改革の一環として方針化されたものであり、分科会活動の発展と若手会員の報告機会増加を意図したものであるが、実際に、第100回大会ではテーマ別分科会6、自由論題4と過去の大会に比して報告者数、会場数が大きく増加し、今回大会においては、さらにそれを大きく上回る規模となった訳である。当然、分科会、自由論題で取り上げられるテーマは多様化し、会員、非会員を問わず多くの方々の興味を引き、初日の参加者数をみればわかるように、大会参加の促進効果をもたらしたものと考えられる。とりわけ重要だと思われるのは、初日の非会員参加者96人中、院生・学生が69人を占めたことであり、将来、学会に入会し学会活動を担うであろう若手が参加してきていることである。実際、大会期間中に非会員の院生参加者が学会への入会申込を行う例が複数あった。
 こうした空前の参加者数は、そのまま懇親会への多数の参加につながり、結局、懇親会には158名が有料参加し、やや手狭な会場を埋め尽くすことになり、まことににぎやかで、熱気溢れる懇親会となったのである。

参加者区分別にみた大会新規受付者数
参加者区分26日27日
名誉会員3 14
予約会員一般 1896195
予約会員院生26430
未予約会員一般83285
未予約会員院生9 211
非会員一般27431
非会員院生69574
非会員報告者9 110
41525440




2.大会会場

 上述の通り空前の参加者となった訳であるが、これに見合った会場が用意できたかどうかが総括の重要な基準である。残念ながら、分科会によっていくつかの問題点が生じた。
 一つは、理想からいえば、同一フロアに全日利用できる複数の会場を用意し、会場間の移動を容易にすることであるが、主会場とした文学部棟において、土曜日の授業がかなり多数あり、分科会・自由論題会場に適した中規模の教室がほとんどふさがっていたため、理想とはかなり離れた教室配置とならざるをえなかった。ちなみに、中央大学が最も近く大会開催校となったのはちょうど20年前の1981年5月であったが、その当時は分科会、自由論題は合計3会場にすぎなかった。これに対し、今大会では合わせて16会場を3セッションに分けて開催することとなり、最大時6会場を用意しなければならなかった。結局、文学部棟内では終日使用可能な中規模以上の教室は2室しか確保できず、後は比較的小規模な教室を2室、6会場を用意すべき第3セッションのみ中教室を1室、そして、文学部棟に隣接する校舎に終日使用可能な1教室を用意して臨むことになり、分散会場とならざるをえなかったのである。
 結果として、参加者には会場間の移動に手間をとらせることになり、また、教室位置の案内表示が十分でなかったこともあって、一部で混乱が生じたことは反省しなければなるまい。
第2に、各分科会、自由論題の会場の割り当ては3月段階でそれぞれの会場毎の内容のタテの関連性(3セッション間の)を考慮しつつ、参加者数の多寡を考慮しつつ行い、実際、その後の参加予定通知ハガキによる参加者数予測はそれと大きくははずれていなかった。しかし、前述のように、未予約会員参加者と非会員参加者数が多数となったことにより、会場によっては、人が溢れそうになる会場もでてきた。やむなく、2つの分科会について、当日、急遽会場の変更を行ったが、これも参加者にはご不便をおかけすることになった。
 第3に、各会場の設備面の問題である。大会初日はかなり気温、湿度とも高く、土曜日ということもあって空調が入らないために、会場によってはかなり蒸し暑く、快適とはいえない環境を受忍していただくことになった。また、共通論題の会場のPAの具合が悪く、演壇とフロアの間の意思疎通面で問題があったことも反省しなければならない点であった。
 また、今大会では、第6分科会でPCとヴィデオプロジェクタを用いてプレゼンテーションソフトを活用した報告が行われたが、割り当て教室に設備がなく、他の部門で機器を調達して対応したが、今後こうしたケースはどんどん増えていくと考えられるので、施設設備の丹念な準備が要請されることになるであろう。

3.大会運営

 前述のとおり、今大会から参加費を徴収することになり、その徴収業務は開催校の仕事となり、これまでの懇親会費の徴収に新たな業務が加わることになった。さらに、開催校の事情で、2日目に学内食堂が営業しないため、昼食として弁当を販売することになり、結局、3種類の経費を徴収することになった。しかも、学会参加費は一般参加者と学生・院生参加者と2通りとなり、その区分も併せて行わなければならなかった。事務局では、受付窓口の混乱を避けるため、あらかじめ参加予定ハガキに基づいて、参加予定者の各項目毎の徴収金額と合計徴収金額を明記した受付台帳と、それに対応する宛名印刷済みの領収証をあらかじめ作成することとし、キャンセルや追加、修正については窓口で追加的に個別対応することとした。前述のように、未予約参加会員と非会員参加者が多かったため、窓口で、手書きの領収証を発行するケースは多かったものの、全体としてかなり業務の合理化が進み、今後の教訓となったと考える。第100回大会の総括のなかで、ハガキの効能について疑義が出されていたが、問題点はあるものの、やはり、ハガキは必要であろうし(ハガキ予約数260うち実参加者数229〜ヒット率88.1%、ちなみに第100回大会ではヒット率79.8%)、むしろ、会員諸氏が必ずハガキを出すよう周知徹底させることが重要であろう。
 分科会、自由論題の会場で大きな問題となったのは、前100回大会に引き続き報告レジュメ部数の不足問題であった。事務局としては、事前に各座長を通じて、各会場の事前参加申し込み数をアナウンスし、昨年の教訓をふまえて十二分にレジュメを用意するよう要請したが、会場によっては、前述の通り、予想をはるかに超える参加者があり、レジュメが足りなくなる会場が続出し、会場係の学生・院生が印刷室(3台の自動謄写印刷機がフル回転)と会場との間を慌ただしく往復することになった。この問題を解決することは今後の大会運営改善のためにたいへん重要な課題であろう。すなわち、非予約参加者数を予め大きく見込み、申込数の2倍程度の部数を用意すること(余部が出ても、当該分科会の非参加者からの配布希望に応えることができる)、また、開催校と各報告者の間のホットラインを確立しておき、事情の変化を直ちに連絡できるようにすることは重要であろう。また、会場でOHPやプロジェクタを使用する報告者に対して、準備の都合上、事前に事務局に連絡するよう呼びかけていたが、直前まで連絡がないケースもあり、このことも含めて、ホットラインの確立は重要な課題であると思われる。
 全体の進行については、とくに大きな波乱なくおおむねスムースに進行したといえよう。事務局は幹事会、企画委員会との間でかなり長期にわたって意思統一を繰り返してきたこと、大会当日に多数の学生・院生の協力を得られたことがその大きな要因である。やや手前味噌になるが、中央大学の学生・院生は分科会・自由論題の会場係や受付担当、そして会員控室担当、会場内外の案内係と、ハードな仕事をよく全うしたと考える。また、文学部事務室をはじめ、各事務部門からは多大な協力を得ることができたことも紹介しておきたい。
 これまで述べてきたように、我々開催校側の不手際によって参加者の皆さんには少なくないご不便をおかけしたが、とにもかくにも大会は無事終了した。それはなによりも、参加者の皆さんのご協力あっての賜であり、末筆ではあるが、深甚の謝意を表したい。

〔鷲谷 徹 記〕






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