ご挨拶



武川正吾

代表幹事就任にあたって


 このたび第29期(2006-08年期)の社会政策学会・代表幹事に選出されましたが,就任にあたって会員のみなさまに一言ご挨拶申し上げます.

 来年,本学会は,明治30(1897)年の学会創立から起算すると110年,戦後の学会再建から数えて57年を迎えます.この伝統は誇るべきことですが,他方で,伝統の重みのゆえに学会の近代化が遅れたことは否めません.さいわい1990年代半ばから,二村一夫・元代表幹事や伊藤セツ・元代表幹事以来の歴代代表幹事によって学会改革が進められてきました.私もこの改革路線を任期二年の間に継承・発展させ,次の幹事会に引き継いでいきたいと思います.

 とはいえ能力と努力(エフォート)に限界があることから,これからの二年間にできることは限られています.そこで第29期の代表幹事として私は,総会で決定された活動方針を踏まえて,次の四つの点に重点を置きたいと考えています.
 その第一は,学会誌のジャーナル化です.すでに学会誌改革の一環として,ジャーナル化に向けた議論が幹事会でも繰り返され,また,そのための努力が歴代編集委員会によって進められてきました.この既定方針の実現を早ければ2007年度,遅くとも2008年度までには具体化すべく準備作業をすすめていきたいと思います.
 第二は,東アジアを中心とした国際学術交流です.近年の経済発展や高齢化にともない近隣諸国でも社会政策の研究が盛んになってきています.これら近隣諸国との研究交流は日本の社会政策学にとっても資するところが大きいと思われます.本学会でも国際交流委員会を中心に東アジア諸国との交流が進められ,今年度の秋季大会では「東アジアの社会政策と資本主義」を共通論題として取り上げられるまでになりました.一部政治家による挑発的な言動のため近隣諸国との政府間関係はぎくしゃくしていますが,こうした民間レベルにおける学術交流はわが国の国益にも沿うものだと信じます.
 第三は,若い会員の能力発揮の機会拡大です.幹事会,委員会,各種部会をはじめあらゆる学会活動の場を可能なかぎり年齢や性別から自由な空間に変えていきたいと思います.これにともなって学会賞のありかたも再検討したいと考えています.
 第四は,日本学術会議をはじめ国内外の関連諸団体との連携の強化です.社会政策のような学際的領域では,関連学会との協力によって本学会が得るところは大きいのですが,これまでのところ,この点が不十分でした.科学研究費をはじめ各種の研究資源が社会政策に関する研究に適切に配分されるようにするためにも,この点は重要です.
 以上の方針にそって努力していきたいと思いますので,会員の皆様にもご協力をお願いいたします.
〔2006年6月〕