社会政策学会史 史料




学会改革に関する論点整理

                         1994年10月26日
                         二村 一夫 記

【これまでの経過】

 1) 本年春の大会前日に専修大学において開かれた92〜94期第16回幹事会は「学会の改革について」検討した結果,「役員選挙のあり方をはじめとしてさまざまな改革案が提起されているので,新本部に1年間かけて問題点を整理してもらい,今後の改革の進め方についても提案してもらう」ことを決めた。
 2) これをうけて二村は,〈問題点の整理〉をおこなうための「前段階の作業として」,これまでさまざまな機会に出された論点に,私見をも加えた「社会政策学会活性化のための改革方策に関する論点メモ」を作成し,7月14日の第2回幹事会の席上で配布した。なお,当日欠席された幹事には幹事会記録とともに郵送し,幹事各位がこの問題についてのご意見を9月末までに提出されるようお願いした。
 3) 9月22日の第3回幹事会は,この問題の進め方について検討し,学会の改革問題は,単に役員選出問題だけでなく,大会や分科会など学会の活動全般について,広く再検討すべきであることで一致した。また,こうした問題は十分時間をかけておこなうべきであるとの意見をうけ,拙速は避けることを確認した。また,改革についての本格的な討議は,地方在住の幹事が出席しやすい大会,研究大会の際に開く幹事会でおこなうことも確認した。
 4) さらに,今回の第4回幹事会の案内とともに,9月末までに提出された野村正實,伊藤セツ,佐口和郎の3氏の意見書を同封し,未提出の幹事には再度,意見書の提出をお願いした。その結果,荒又重雄,相沢与一,石田光男,戸塚秀夫,早川征一郎の諸氏からご意見が寄せられた。今回は,これらの意見書をそのままコピーして配布すると同時に,これまで提出された意見の論点整理を試みた。なお,冒頭に学会改革問題の審議の進め方について提案している。



【学会改革問題審議の進め方についての提案】

検討課題の優先順位

 1) 予算にかかわる問題は,来年春の大会の総会で決定しないと,実行はさらに1年以上先送りされる。
 2) 役員選出など会則の改正を必要とする問題は,遅くとも来年秋の研究大会の際に臨時総会を開いて決定しないと,実施はさらに2年以上後になる。
 今回は,以上の2点の検討を優先したい。
 3) 大会や部会分科会の改革・活性化こそ,学会改革のポイントであると考えるが,これについては,会則の改正をまたずとも,実際上改善できる余地が大いにあると思われる。これについては,出来ることから順次,実現する方向で努力したい。さしあたって今回は,来年春の大会の共通論題とそのコーディネーターについて検討し,できれば大筋で決めておきたい。
 4) 学会賞の制定,外国学会への加盟などにより,来年度は会費値上げを実施せざるをえない。したがって,予算措置をともなう改革案については,今回の一連の幹事会において合意をみたい。そうしないと,会費の値上げ額も決められず,予算案の編成もできない。
 5) 会則改正にかかわる問題については,今回の幹事会において,最低限,改正を要する点についての合意をみたい。もし改正内容についても,今回の審議で合意が得られれば,早い機会に改正案を作成し,全会員にこれを知らせた上で,来年春の総会で決定することができる。しかし,改正内容について意見の一致をみることが出来ない場合は,以下の手続きをへて決定したい。①対立意見を併記し,どちらを選ぶかを問うアンケートを全会員に送り,②その結果にもとづき,来春の大会の際に開く幹事会で改正案を決定して,これを全会員に知らせ,③来年秋の研究大会の際の臨時総会で決定する。



【財政問題】

支出増となるもの

 1) 現状では会費値上げは避け難い。学会賞の賞状や記念品,選考委員への旅費支給(年2回を限度),外国学会への会費など,すでに支出増が決まっている事業がある。授賞者の人数などにより支出額は異なるので,金額は確定できないが,40〜50万円程度(会員1人当たり500〜600円程度)であろう。
 2) 提案されている改革案のうち,支出増をともなうと予想されるものは次の通りである。今このすべてを実施することは不可能であろう。どれを優先させるか,ご検討ねがいたい。
① 学会事務センターへの事務委託(伊藤)……会費請求事務のみの委託で年間約50万円を要する。なお,初年度はほかに委託開始事務費+原簿作成費などで40万円前後を支払う必要がある。
 会報,案内などの発送回数に応じ会員1人につき1回70〜50円。これには封筒代,宛名シールなどは含まれるが,郵送料は別となる。現在のように,①大会案内の発送,②欠席者への報告要旨の送付,③自由論題の募集,④Newsletter2回の発送,業績リストの発送など,6回の発送を委託すると1人当たり815円になる。このほか10万円の会員管理費があり,新入会員の登録,住所変更などの度に1件600円から700円の追加手数料が必要であるので、事務委託をするとおそらく1人当たり1,000円程度の費用負担となろう。他方,本部費のうち人件費,雑費などは若干減らすことができよう。
② 『社会政策叢書』の購入の義務化(1人3,000円)。
③ 季刊の機関誌発行(頁数,回数など不確定要素が多いが,年報代よりは増えるであろう)。
④ 大会経費の完全学会負担(各大学の学会補助費の額により変化する。現在は60万円弱であるから,10万〜40万円程度増額する必要があろう)。
⑤ 大会報告を依頼した非会員への旅費宿泊費等(10万〜20万円)
⑥ 大会報告者の準備会。旅費・会合費など(20万円前後)。
⑦ 幹事会への出席に多額の旅費を要する幹事への補助(出席者数,補助率などにより異なる)。
⑧ 郵送による役員選挙(10万〜17万円)。
⑨ Newsletter の発行(10万〜20万円)。

 支出減,あるいは収入増となるもの

 会費値上げと同時に,支出削減や別途増収の方法を考える必要もあろう。現在,具体的に提案されているのは,つぎの通りである。
① 入札により印刷費を節減(早川)。
② 報告要旨の簡素化 & or 欠席者への発送中止(二村)。
③ 大会参加費の徴収(伊藤)。
④ 資料費の徴収。
 ①については,大方の合意が得られるのではないかと考える。②以降はご検討願いたい。なお,③④のうち,非会員からの大会参加費・資料費の徴収は,事務的に可能なら今回の大会からでも実施したい。報告要旨とも1人1,000円(2日間)ではいかがか。

 4)在外留学者,在外会員の会費減免
 財政に関する問題では,在外留学者,あるいは在外会員の会費減免を考慮すべきであるとの意見がある。しかし,短期間ではあるが本部事務を担当した経験からすると,ただちには賛成できない。少なくともこうした措置をとるためには,事前に本人から留学期間が本部に連絡され,留学中は大会案内,報告要旨,名簿など,学会本部からの通信連絡はいっさい絶つこととを制度化する必要がある。現状では,在外留学者の場合は,一般会員の多くより,本部の負担が大きくなりがちだからである。すなわち,①留学中の会員への通信は他の会員とまったく同様におこなわれており,それなりのコストがかかっている,②減免論の背景には,長期会費滞納者のなかに留学者が少なくないことがある。しかし,長期滞納者に対しては,しばしば会費納入の督促をおこなうなど本部はかなりの負担を強いられる。また住所不明となるケースも少なくなく,名簿作成のための問い合わせるなどでも,一般会員よりかえって本部の負担は大きい。
 また,海外在住会員の場合も,通信連絡については,一般会員より経費や手間がかかる。この点からすれば,むしろ一般会員より高い会費額を設定してもおかしくはない。ただ,外国人会員を意識的に増やす方針をとるのであれば,政策的に低く抑える必要があるかも知れない。

【会則の改正を要する問題】

役員選出に関する問題

 ① 多選の制限……幹事は,連続しては3期6年を限度とするとの案が,前期の幹事会で石畑幹事から「会則改正案」として提出された。正確には「役員の任期は2年とし,3選を妨げない」というのである。これだけでは,1期休んだ後にふたたび幹事になることが可能か否か明瞭ではなかった。この点については伊藤セツ幹事から,連続3期を限度とし,1期休めば,改めて連続3期選出されることは可能とする案が出されている。
 このほか戸塚幹事から3選禁止,つまり再選までとする案が出されており,また相沢幹事からは,連続・不連続をとわず5期10年を限度とする案が提出されている。
 なお,監事についても同じ基準を適用するのか否かも問題となろう。
 ② 役員定年制(たとえば65歳未満)を設ける案,あるいは高齢者の幹事枠を決めること(戸塚提案)。



選挙方法に関する問題

  ① 郵便投票……総会での選出によらず,会員全員による郵便投票を実施することが,伊藤幹事から提案され,戸塚幹事もこれを支持している。
 問題は投票事務をどこで担当するかであろう。発送には,会員名簿の管理をおこなっている本部校が加わらざるをえないであろう。しかし,開票などは,別個に選挙事務を担当する当番校を設ける必要がある。
  ②当選者の辞退権……学会運営にかならずしも積極的でない人が役員となる事態を避けるには,当選者が辞退する権利を認めるべきであるとする意見(伊藤,戸塚)が出されている。
 ただ,当選後に辞退することを権利として認めるとなると,せっかく全会員の投票をおこなう主旨が損なわれる。個人的な事情で辞退したい者は,事前に選挙管理委員会に申し出て,あらかじめ被選挙人名簿から削除するか,その旨明記する方法をとるべきではないか。推薦立候補制をとれば,こうした問題は解決するのではないか(二村)。



【〈幹事会申合わせ〉の改正ですむ問題】

役員選挙に関する問題

 ①連記人数の削減……戸塚提案。
 総会での投票を維持するならば,必要な措置であろう。郵便投票でおこなうのであれば,現在の数でも可能ではないか? 減らすとして何人にするのか?
 ②分野別代表……現在は幹事の定数を地域別に定めている。これには歴史的経緯もあり,秋の研究大会が地方部会によって開催されていることなどを考えると,今後もブロック別枠は無視しえないであろう。しかし,社会政策学会は学際的性格をもつ学会で,経済学だけでなく,社会学,法学,歴史学など異なった学問分野の研究者が集まり,研究対象も労働問題,社会保障,社会福祉などに広がっている点に特色がある。この点を考えると,幹事には地域別と同時に,各分野の代表が確実に選出されるような配慮が必要であろう。この解決策として,つぎの2つの提案をしたい。ひとつは推薦立候補制をとることである。こうすれば,独自の要求をもつグループの代表が出やすくなるのではないか。ただ,これだけでは幹事会の構成が偏ったものとならない保証はない。そこで,選挙による幹事は従来通り地域ブロック毎に選出するが,推薦幹事については地域別の枠をなくし,分野別,性別あるいは年齢別などさまざまな要素を考慮して選びうるようにする(二村)。
分野別の代表は,再編され実質化した新しい分科会の代表とすべきである(佐口)。



【大会・研究大会の改善】

 1) 共通論題の決定時期を大幅に早め,準備に時間をかけること(野村)。
 2) 大会テーマの設定を幹事会だけでおこなわず,テーマに応じて,一般会員からもコーディネーター,あるいはプログラム・コミティーへの参加を求めうるようにする(佐口)。
 3) 学会の〈対社会的機能〉を重視し,大会の開催自体をもっと学生・市民に知らせる。また、開催地によっては一般市民向けの講演会を企画することがあってよい(戸塚)。
 4) 大会テーマはカレント・トピックスに偏している。歴史的研究や理論的研究もとりあげるべきである(相沢)。
 5) 「大会報告者についての幹事会申し合わせ」を改め,非会員を共通論題の報告者として積極的に招くようにする(戸塚)。
 6) 関東部会にも地方研究大会の開催を認めるべきである(相沢)。
 7) 大会報告者の数を大幅に増やす。これには,報告の完全原稿の作成や報告時間の制限が必要(二村)。
 8) 分科会の数を増やす & or 地方研究大会にも分科会を設ける。
 9) 共通論題を2日にわたるものとせず,1日にまとめる(野村)。なおこの提案は,大会開催日数を1日に減らすという意味ではない)。



【地方部会・各分科会の活性化】

 1) 労働組合分科会,生活問題分科会など各分科会の活動をもっと活発にする方策を検討する。休眠同様の分科会は廃止し,その予算はほかにまわす(二村)。
 2) 大会時に開催するテーマ別分科会の立案を,主として各分科会の責任とする(二村)。
 3) 地方部会の任意組織化(荒又)。



【会員範囲ほか】

 1) 外国人会員を意識的に増加させる(荒又)。
 2) 若手研究者や女性会員,近接分野(社会学,労働法など)の研究者の増加をはかる。そのためには,大会の共通論題や分科会のテーマ設定にいっそうの配慮が必要であろう(二村)。
 3) 研究分野や問題関心につき登録し,共通論題や分科会のテーマなどを決定する参考にする(二村)。
 4)「夫婦会員等の会費について」の幹事会申し合わせの廃止。
                             以 上



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