第17回東京大学社会科学研究所シンポジウム
グローバル時代の「ニュー・エコノミー」
−日米欧の比較ジェンダー分析−
(大沢真理会員より)
日 時:2002年9月3日13時〜17時、終了後レセプション
場 所:東京大学本郷キャンパス山上会館(同時通訳つき)
参加者予定:先着150人(申し込み先:yytt@iss.u-tokyo.ac.jp)
参加費:無料(レセプションは会費を申し受けます)
コーディネータ:大沢真理(東京大学社会科学研究所)
パネリスト:シルヴィァ・ウォルビー、カリン・ゴットシャル、ハイディ・ゴットフリート、イルゼ・レンツ
討論者:ジョアン・アッカー、上野千鶴子、足立眞理子、セシリア・ナン
趣 旨
経済グローバル化のもとで、先進国経済はアメリカを先頭として「ニュー・エコノミー」の段階に入ってきたといわれる。「ニュー・エコノミー」の特徴とされるのは、(1)重化学工業中心の「規模の経済」から、サービス業などを中心とする知識(OSとネットワーク)の掌握にもとづく「範囲の経済」へ、(2)産業と企業の「中抜き」、すなわち卸売業と中間管理職層の合理化による「フラット化」、(3)新しい多様な就業形態のもとで労働のあり方の「柔軟(フレキシブル)」化、(4)規制の緩和・改革による「利用者指向user oriented」のサービス業の発展、(5)公共部門の事業の民営化、政府運営への企業経営手法の導入(New Public Management)、などである。
しかし、第一に「フラット化」や「柔軟化」が語られながら、じつは社会的格差の拡大が懸念される。先進国と途上国のあいだはもちろん、先進国社会内部でも、古典的な社会階層格差に重なって教育の有無、世代、エスニシティなどによる格差問題が深刻化し、これらの格差のいずれも、「ジェンダー」格差と交差している。また第二に、もとより先進諸国のあいだで、産業組織・労使関係制度も社会的・経済的規制や福祉国家のあり方も一様ではなかったが、近年の規制改革、福祉国家改革のベクトルも、規制緩和や民営化ばかりではなく、再規制化やセーフティネット強化の要素が見逃せない。
日本、米国、ドイツ、イギリスは、今日の世界経済で大きな比重をもち、かつ相互に意味ある好対照をなしている。また、イギリスとドイツの分析で主要な側面となるEUは、経済の規制緩和の舞台であると同時に、機会均等および労働と家庭生活との
調和を目指す点において再規制化の舞台である。なにより4つの国は、異なる性格のジェンダー・レジームを持っている。アメリカは女性の就業を促進する方向に最も進んでおり、日本は女性の世帯内役割を最優先するジェンダー・レジームであるように見える。福祉と産業労働、家庭を横断するジェンダー・レジームは、収斂しているのか、あるいは強い経路依存性(path dependency)のもとで、分岐しているのか。
各国を代表する気鋭のジェンダー研究者が迫る。
〔2002.7.27寄稿〕 |