社会政策学会史 史料




社会政策学会活性化のための
改革方策に関する論点メモ

                     1994年7月14日
                         二村 一夫 記

はじめに

 今秋の大会までに、本部校が、社会政策学会の改革に関する問題点の整理をおこない、改革の進め方について提案するよう、前期の幹事会で決められ、総会でも報告されています。これまで、主として問題にされてきた、あるいは改革論議のきっかけとなったのは、幹事の選出方法でした。しかし、改革が必要なのは、単に役員の選出方法や任期だけでなく、大会、研究大会のあり方をはじめ、本部の役割、地方部会、常設分科会の活動、年報、会報などの出版物など多岐にわたると思われます。
 そうした諸問題について、短期間で、全会員が一致する改革案をまとめることは、容易ではありません。しかし、現在、社会政策学会の組織・活動などさまざまな面について見直しが必要であることは、多くの方が指摘されているところです。この問題は、おそらく、今期の幹事会の最大の課題であろうと思います。
 学会の改革の成否は、その内容はもとより、その実現にむけ、できるだけ多くの会員、とりわけ若い世代の会員が、自主的積極的に参加するか否かにかかっていると考えます。それには、この問題を幹事会での会則修正問題に限定することなく、より広範な問題について、さまざまな場で論議し、それによって多くの会員が学会の活動に意欲的に参加し、積極的に発言するような状況をつくる必要があると考えます。それには、幹事会が、できるだけ早い機会にこの問題を検討を始める必要があると思い、手始めにこのメモを作りました。
 幹事各位、さらにできるだけ多くの会員から、多様な改革意見、学会の現状に対する批判が出てこないことには、問題点の整理も出来ません。そこで、まず、従来、幹事会の場をはじめ、さまざまな機会に出された問題点、批判点、改革案などを列挙し、それに私自身の思いつきも加えてみました。
 要するに、以下のメモは、今秋の大会までに整理せよと指示された「問題点の整理」に向けての前段階の作業として、多様な改革意見を出していただくための〈呼び水〉として、作成したものです。
 これ自体が、前幹事会から指示された問題点の整理ではありません。まして、具体的な改革案でないことは、いうまでもありません。相互に矛盾する主張が列記してあります。各位の積極的な発言を期待しています。
 短期間でとりまとめましたので、整理不十分な点が多いことはお許しください。

問題点

【役員選出に関すること】

☆ 会則の改正を要する問題
 1) 多選の制限(何回まで認めるか)。
 2) 役員に定年制を設ける。
 3) 選挙方法に関する問題
  a) 総会での選出によらず、会員全員による郵便投票を実施する。原理的にはもっとも民主的であるが、問題点も少なくない。
    ア) 投票用紙の印刷送付、開票事務などの業務をどこで、誰がおこなうか。本部校とすれば、現在でも手弁当でやっている本部校の負担がさらに増大する。別個に、選挙事務を担当する当番校を設ける必要があろう。
    イ) 費用の問題。郵送費・印刷費などで最低20万円程度か?
    ウ) 郵便投票の場合は、学会運営にかならずしも積極的でない人が当選する可能性が増し、幹事会の出席率が下がる。原理的には民主主義的であるが、実際にはごく一部の幹事で運営する事態となるおそれがある。
  その対策としては、立候補制 & or 一定数の会員の推薦による推薦立候補制をとる。ただし、選挙事務を担当する当番校の負担は大きくなる。
  b) 総会での選出によるが、欠席者にも投票を認める。
  この場合、欠席者だけが、総会前に郵便投票をおこなう必要がある。しかし、これは、技術的に困難であろう。委任状による投票なら可能か?

☆ 「役員選出についての了解事項」の改正で可能な方法
 1) 現在の選挙方法の問題は、10人という多数の幹事の名前を、短時間で記入しなければならない。そのため、会員の間に名前が知られている常連が当選する結果になり、若い会員が当選する可能性が低い。また労使関係分野の比重が高く、社会保障・福祉関係の会員が選出幹事になり難い。
 こうした状態を改める方法としては、
 a) 立候補制度 & or 一定数の会員の推薦による候補者の中から選出する。
 b) 連記制の改廃
  ア) 連記による人数を減らす。
  イ) 地域ごとに選出する。
  ウ) 研究分野別の選挙区を設ける。
  エ) 単記制にする……少数の会員に投票が集中し、他はごく少ない得票で決定する可能性があり、適切ではなかろう。


☆ 運営上の改善によって可能な方法
 役員の選出の際に、参考資料を配布する(地域別被有権者リスト、過去3〜4期の役員氏名一覧など)。


【組織改革】

1) 本部校を、東京周辺以外からも選び得るようにする。……これまで東京以外の本部となったのは労働科学研究所(川崎)だけ。問題は、東京以外の場所で幹事会を開くと、出席者が大幅に減少することであろう。

2) 学会の運営を機能別に分担する(業績一覧の作成など、すでに実施している)
   ニューズレターの発行、国際交流事務局など
3) 国際事務局の設置
 2年ごとに本部校が交代する状態では、国際交流には不都合が多い。どこか一定の機関が、長期的に国際交流事務局を引き受ける必要がある。


【大会・研究大会の改善】

 1) 大会共通テーマの決定方法……アンケートの際に過去の大会の共通論題、分科会のテーマ一覧、前回のアンケートの結果などを配布する。
 2) 大会報告者の数を大幅に増やす……報告の完全原稿の作成。報告時間の制限。
 3) 分科会の数を増やす & or 地方研究大会にも分科会を設ける。
 4) 合評会形式の分科会を設ける。
 5) 大会テーマの設定を本部校の義務とせず、コーディネーターや報告者を公募する。


【地方部会・各分科会の活性化】

 1) 労働組合分科会、生活問題分科会など各分科会の活動をもっと活発にする方策を検討する。休眠同様の分科会は廃止し、その予算はほかにまわす。
 2) 大会時に開催するテーマ別分科会の立案を、主として各分科会の責任とする。


【財政問題】

 1) 現状では会費値上げは避け難い。
1人1,000円値上げで約80万円の増となる。1,500円の値上げで120万円増。大幅増の場合は、大学院生などは据え置くといった措置が必要であろう。
 2) 会費の限度額はどれほどか?
 3) 値上げだけでなく、支出削減、あるいは別途増収の方法はないか。たとえば、報告要旨を冊子体にする必要はあるか? 報告要旨の作成に70万円もかける価値があるか。冊子を作るとしても頁数制限を厳守する必要があろう。
資料や paper の有料配布、大会参加費の徴収なども考慮されてよいのではないか。もっとも僅かな増収の割りには開催校の負担をさらに大きくする可能性があるかもしれない。
 4) 在外会員の会費の扱いをどうするか。減免措置を考慮すべきとの意見もあるが、今後海外在住の外国人会員の増加を図るとなると、免除は難しい。両者共通の減額措置を講ずるか。


【会員範囲】

 1) 外国人会員を意識的に増加する。とくに東アジア。
 2) 若手研究者や女性会員、近接分野(社会学、労働法など)の研究者の増加をはかる。そのためには、大会の共通論題や分科会のテーマ設定にいっそうの配慮が必要であろう。
 3) 研究分野や問題関心につき登録する。共通論題や分科会のテーマなどを決定する参考にする。


【大会開催について】


 ☆ 開催校が赤字を出すような運営を改める……懇親会の簡素化 and or 懇親会費値上げ
 ☆ 大会時の幹事会、年報編集委員会での弁当は個人負担とするか、本部財政で支出すること。
☆ 受付業務の簡素化……大会時納入をやめ、全員、郵便振替にする(1万円〜1.5万円の支出増)。ただし、本部校の事務負担は若干増加する。
 銀行からの自動引き落とし制……2年ごとに本部が移動している現状では無理であろう。

【研究大会】

☆ 分科会を設ける……すでに本年度から書評分科会として実現。
☆ 社会政策学会叢書についても、全員購入を義務づける……年報と叢書で6000円とすると、会費総額は1万1000円以上になる。

【改革の進め方 or 改革論議の進め方】

 会則の改正を要する問題は、来年の第90回大会の総会で決定しないと、次期の役員選挙に間に合わせることが出来ない。もっとも、どうしても具体策がまとまらなければ、1995年秋の研究大会の際に総会を開いて決定する方法もある。そのあたりがタイムリミットであろう。
 改革の具体的な内容とその進め方については、幹事の多数が参加する可能性が高い秋の研究大会の際、その前日幹事会を設定し、そこで論議するほかない。ただ、その時に、ある程度突っ込んだ議論するには、その場で論点整理の文書を配るのでなく、事前に文書を作成し、あらかじめ検討しておいていただくべきであろう。
 それには、9月末までに、幹事諸氏のご意見を本部宛に、文書で出していただければ好都合かと存じます。

 ☆ 全会員に〈アンケート〉を配って、調査した方がよいか? その場合、誰が、何時、どのように調査・集計するか? 本部にはその余力はない。

以 上



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